狂イ咲ク狂気ハ愛情ダ

ハチ ページ8

闇が月を隠す。月光が消えた部屋には火だけがほのかに揺らめく。
そして、半兵衛はその気配に気がついた。


半「どうかしたかい？」

影は黙ったまま、彼をじっと見た。


半「珍しいね。君がこんな時間に... 」

刑「賢人」


影、刑部は半兵衛に御輿で近づく。


刑「なにゆえ... 」

半「？」


刑部の言葉は途切れた。半兵衛は彼の包帯越しの表情を察し眉をひそめた。


半「三成君の事... かい？」


しばらく沈黙が続いた。

半「なぜと言われてもね... これは僕の判断だ」

刑「あやつには少しでも幸を与えてやりたい... そう思うておったのではないか？」


半兵衛は炎を見つめる。


半「確かに... 欲の無かった彼が初めて自らの意思で要求した。それは喜ばしい事。できる事ならその望み、叶えてあげたい... だが」


半兵衛は表情をかえた。


半「君も薄々気づいていたはずだ。彼の... 三成君の変わり様を」


刑部は言い返す事が出来なかった。
確かに、大名になってからというもの、三成の行動はおかしかった。真実を告げられるまでは、刑部自身もあまり首をつっこまないようにしていた。

しかし、半兵衛は違った。
三成初陣の戦で主である秀吉が三成に手柄を立てた褒美は何がいいかと聞いた時があった。三成はその時にこう答えた。

『秀吉様の美しいと思う着物が欲しいです』

領地ではなく着物を指名してきた。それはAへの贈り物だと知ったのは、しばらくたってからだ。
彼なりのいつも世話になっているお礼か、それとも淡い恋心なのかとその時はそれくらいで済ませていた。

淡い恋心が激しい情へと変わったと知ったのはつい最近だ。刑部はその前から知っていた様だが。


半「Aちゃんには悪いが、遠くへ行ってもらうことにした。これは僕と秀吉の話し合いの結果だ。命令と言えば彼も諦めるだろう」

刑「主の知略にしては甘い... 」

半「え？」

刑「いや、三成を甘く見らぬ方が良い」


刑部はそれだけ言うと、部屋を出ていった。

(三成は... 例えAが亡き者となろうが、その果てまで求め、欲し、そして手に入れようとする... )

長い付き合いだからこそ、三成の感情も分かる。ゆえに.... 判断ができない。
異常過ぎる彼の感情は反対からいえば、純粋すぎる恋心。

刑部は一人悩んだ。


友の初恋か豊臣の未来か...

ク ★→←シチ

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