感覚 その2 ページ21
わかりきっていたことではないか。
そう、脳は理解していた。
けれど私の精神がそれに追いついていないというだけ。
それだけなのだ。
嫌な感覚が拭いきれない。
呼吸が浅くなりそうなのを何とか抑えてゆっくりと息を吸う。
『なんとなく、それ以上捜査というか調査というか・・・・・・しない方がいい気がします』
「おめーが言うならそうなんだろーな」
『そうなんだろうなって・・・・・・』
随分と他人事のように言うではないか。
「そう怒るなよ」
『怒ってません』
本当かよ、と電話越しに少し笑みを浮かべた相手の顔が見えた気がした。
「また電話すっから」
『わかりました』
ざざっとノイズが入ったが、その後にツーツーと通話が終了したことを知らせる音が聞こえた。
受話器を置いて台所に戻り水をグラスに注ぐ。
それをいっきに飲み干す。
流し込むのだ。
たまに自分が感情の持たない、理解できなければ良かったのにと思うことがある。
辛いことも苦しいことも悲しいことも、理解できなければ。
逆に嬉しいことも恋をすることも無いのだけれど。
いいなあと思う反面やっぱり嫌だなあと思う。
どっちもどっちなのだ。
生きるということは死ぬことで。
死ぬということは生きたことで。
・・・・・・やっぱり私はぬるま湯に浸かっている。
熱くもなければ冷たくもない、中途半端。
ふう、と息を吐く。
億泰に根を詰めすぎなんじゃないかと言われたけど、その通りかもしれない。
百鬼一族はもう私しかいない。
それでも私が家業を受け継ぎたいとSPW財団の人たちに無理を言ったのは、残しておきたかったから。
私が覚えることで何かが変わる訳ではないのだろうけど。
それでも両親から受け継げるものがあるなら、と私が欲しがったと言えばいいのだろうか？
それがたまたま家業だっただけ。
しかし、やはり感覚が鈍ってきているのは間違いない。
兄さん、だったら相手してくれるかな？
いや、兄さんは女の人相手に手合わせとかしてくれそうにないな。
しばらく考えるものの、思い当たる人物がいない。
SPW財団に頼む訳にもいかない。
瞑想ぐらいかな？
イメージトレーニングとか？
今になって、今更ながら気が付いた。
手合わせしてくれる相手がいない！
そりゃそうだ！
そもそも！兄さんや億泰たちが女の子を床に叩き付けたりするわけがない！
したとしても、それはよっぽどの理由だろう。
どうも、感覚を戻すには一人でするしかないみたいだ。
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妹者 - 凄く面白いです！お話の続きが気になります。更新頑張って下さい！ (2018年8月18日 23時) (
レス) id: 2e9f8a8485 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!凄く面白くて楽しかったです。これからも頑張ってください!!! (2018年4月5日 3時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シマエナガ | 作成日時：2017年8月26日 16時
