漆 ページ9
私が電話して数分。
万次郎とドラケンが家まで来た。
「珍しいな。Aから声掛けてくるとか」
私は肩を竦めながら2人とメールで送られてきた場所まで向かう。
「もしかしたら、私一人じゃ危ないかもしれなくて」
「危ない?そんな場所行こうとしてんの?」
万次郎はやや怪訝そうな顔をする。
私はカバンからどら焼きを出して万次郎に渡す。
「それあげるから着いてきてお願い」
そう言うと万次郎はにこにこしながらどら焼きを食べ始めた。
「Aさん、何しようとしてんだ?」
「……東卍って、渋谷三中の人いるよね?」
ドラケンにそう聞くと、彼は少し考えてから頷いた。
「名前は?」
「確か、参番隊のキヨマサだ」
キヨマサ……
その人なのかな……とにかく、何とかするって言っちゃったし無視できないんだよね。
絶対にもう不良に関わらないつもりだったのに、こんな形で関わることになるなんて。
うーんと頭を悩ませていると、ドラケンが「ついたぞ」と言う。
顔を上げると、そこにはたくさんの不良がいて、サークル状に固まっていた。
「何これ」
万次郎があまり興味無さそうにそう呟く。
「……喧嘩賭博…」
私が小さな声でそう言うと、ドラケンが「ああ」と言った。
「そういや、キヨマサが主催でんなことしてるって言ってたっけ」
「何それ、くだらねー」
円の中を見ると、中心で金髪リーゼントくんが、この間公園にいた渋谷三中の人に殴られていた。
また、一方的に。
だけど、今度の彼は何度殴られても蹴られても倒れなかった。
周りの人達は大盛り上がりで叫んでいる。
「殺せー!!キヨマサくん!!!」
やっぱり、あの人がキヨマサなんだ。
「もういいってタケミチ!!!」
「マジで死んじまうぞ!!」
そう叫んだのは敦くんとタクヤくんだった。
周りも、その異様な光景に、いつの間にか静まり返っている。
「ま…だぁ…まだだよ…」
金髪の彼はボロボロのままそう言う。
「まだまだ…こんなんじゃ…オレ…の12年……ヘタレた…心は…直らねぇんだ…よ」
何言ってるの…?12年?
「逃げて逃げて逃げて逃げて」
「もう引けよ!タケミチ。十分気合見せたよ!!」
「引けねぇんだよ!!!!引けねぇ理由が、あるんだよ!!!」
自分より強い相手に、臆することなく向かっていく姿は、あの人にそっくりだった。
「東京卍會、キヨマサ…勝つにはオレを殺すしかねーぞ」
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作者名:まゆげない | 作成日時:2022年4月26日 1時