捌拾捌 ページ13
それからさらに一週間。
Aは、ある程度基礎が身について来た梓に呼吸を教えようと考えていた。
「師範が使っている光の呼吸ですか？」
『正確には、それの元である雷の呼吸ね。まずは雷の呼吸を覚え、
そこから派生させるの。宇髄殿の音の呼吸のようにね』
Aが稽古を付けられない日、梓は基本宇髄の元で代わりに稽古を付けてもらっていた。
そこで梓が何度か見せてもらった音の呼吸も、光の呼吸と同じく雷の呼吸の派生だ。
『梓は覚えも早いし、これまで足腰を鍛える鍛練を中心にやってきたから、
半年もあればちゃんと会得出来るはずよ』
「は、半年...」
『そして、特に大事なのは全集中・常中。これが出来るか出来ないかでは天地程の差が出るの。
その分血の滲むような努力が必要だけど、必ず梓の力になるわ』
「はい！」
梓は大きく返事をすると、木刀を構えた。
Aはその構えや達筋を調整していく。
『そう...そしてそのまま体勢を低く』
グッと膝を曲げた梓が、苦しそうに顔を歪ませる。
脚力が全ての要である雷の呼吸は、男よりも筋力の弱い女にはかなり厳しい。
それでも姉の敵を討つ為だと、梓は顔を上げ、Aの過酷な稽古を乗り切ったのだった。
梓が少しずつ全集中・常中をものにしてきた頃、Aは胡蝶に呼ばれ、蝶屋敷に来ていた。
「この三週間、身体や記憶に関して何か変化はありましたか？」
『特には何も。無一郎もよく屋敷に来てくれているのだけれど...』
「そうですか...薬もまだ出来ていないんです、ごめんなさい」
『...胡蝶殿』
Aは目の前に座る胡蝶の目を見つめた。
美しい紫色の目に、真剣な表情をしたAが映る。
『私と無一郎は、恋人同士だった？』
「え？」
胡蝶は時々来る時透にAの現状を聞いていた。
しかし、彼からは「恋人だったことは隠している」と教えられたのだ。
継子である梓にも口止めしているという。
『時たま、無一郎が不思議な目をするのよ。まるで、愛する者を見るかのような目。
ねぇ、本当の事を教えて。私と彼の関係を』
「...本人からは口止めされているんですがねぇ...。
そうです。貴方と時透くんは恋人関係にありました。
ですが、自分を責めないでくださいね。時透くんもそう思って隠していたんですから」
それはAも分かっている。
しかし、愛する者を失う悲しさを知っているAの心情は複雑だった。
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桜餅(プロフ) - 織葉さん» ありがとうこざいます！作るの遅くなって申し訳ありません... (2020年2月16日 11時) (
レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
織葉(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも頑張ってください。応援しています！！ (2020年2月15日 22時) (レス) id: f370ea2008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イリア x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時：2020年2月15日 22時
