どうしよう、これ【歌い手】

episode3 ページ5

そして、キッチンでお皿を洗いながら気づいた。

(あの人お風呂入ってないし、そろそろお風呂とか入りたい頃だよね？)

でも、私の家にはフリーサイズの服はあっても、新品のメンズ用下着はない。

そう言えば、長ネギもさっき切らしたわ。鰹節とか、ハムとか、コーンスープの素とかも今ないもんなぁ。買い物に行かなくちゃいけないな。今日は休みだしちょうどいい。

と思ったけど相川さんに下着のサイズ聞かなきゃいけないじゃん！あー、くそ、恥ずかしい。あ、家から持ってきて貰えば…持ってこれるんだったら熱が微熱になった時点で帰るよな、多分。

てことは結局サイズ聞かなきゃいけないのか…めっちゃ憂鬱なんだけど。

手早く洗い物を終わらせて、相川さんに下着のサイズを聞いた後、買い物のメモを作り、彼に声をかける。

「すいません、ちょっと買い物に行ってきます。多分1時間もすれば帰ってこられると思います。寝られなかったらテレビでも見てて下さい」

彼は不安げな顔をして、

「あ…はい、分かりました。その…なるべく早く帰ってきてくれませんか？」

そう答えた。

え、イケメンの破壊力よ。やばいな。こんな風に言われたらもうそうするしかないよね。

「分かりました、なるはやで帰ってきますね」

と微笑みながら言って、部屋を出る。

「行ってきます」

そう声をかけて、扉を閉めて鍵をかけた。





まふまふside

…遅いなあ。テレビに飽きてそう思い、ちらりと時計を見るとまだ40分しか経っていない。

スマホをいじろうと手に取ると、そらるさんからのLINEがロック画面に表示されていた。

そらるさんていうかお前どこにいんの?

そらるさんみんな探してるからなるはやで帰って来いよ

そらるさんいくらでも俺らのこと頼れよ

みんなって誰かな…うらたさんかな、さかたんかな、天月くんかな、キヨかな。

そんなことを考えていた時、玄関のチャイムが鳴った。

神代さんが帰ってきたのかなと思ってインターフォンを見に行くと、神代さんじゃなかった。

一昨日追いかけてきていたストーカー女。

そう意識した途端に息が出来なくなる。

「ﾋｭ、ヒュ」

あれ、息ってどうやって吸うんだっけ、呼吸ってどうやるんだっけ、わからない、どうしよう、と思っていたら鍵が開く音がした。

episode 4→←episode 2

歌い手さん秘蔵映像

｢タッピオカータッピオカー｣ルンルン96猫さん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す