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8話「家政婦と腕」 ページ9

池袋駅から発車し、目的地の新宿駅へ到着する頃には、外はすっかり暗くなっていた。


現在時刻は午後5時半。聖夜を来月に控えたこの時期は季節風なのか風が冷たく、日が落ちるのも早い。


買い物には先生が行ってくれるという事だったが、部屋に新しく飾る花のことは伝えていない。花瓶に添える花は、どうしても自分で選びたかったから。


別に花を飾れと先生に言われた訳ではない。数ヶ月、単純に私が飾りたいと思って置いた花を、先生が喜んでくれたのがはじまり。


それからは季節や旬に合う花を買っては部屋に飾り、その度に先生は「綺麗な花だね」と褒めてくれる。


元々花が好きだったこともあるから、毎週どの花を飾ろうかとか、そんなことを考えるのが楽しくなっていた。


冬の初めにあたるこの時期。ぴったりな花は何があるかな…と考えながら、いつもの花屋に向かう。


花屋に向う道中。煌びやかな街灯やネオン色に染った新宿の街並みや、車道を走る車のライトに目がチカチカする。見慣れたはずの明かりは、私には合わないようだ。


普段の買い物や外出は日中に済ませておく為、慣れない夜の新宿に私の目は追いつくはずもなかった。


少し危険だが仕方ない…なるべく光の当たらない道を通る。そして角を曲がり、目的の花屋が見えた時だった。



「おい」



来た道の反対側の狭い路地裏から、低い声が聞こえた。街灯の光から逃れる様に、暗闇を纏う人影がぼんやりと見えた。


「待て」


先生では無いことはすぐに分かった。声色から微かに、苛立ちや怒りのような感情を感じる。


短い言葉をかけられただけなのに、妙に脳に響く声に思わず足を止めた。


そのまま暗闇の方へ視線を向け、小さく声を発する。



『…誰?』


私の問い掛けに暗闇から返事はなく、『声をかけられたのは私じゃないのかな』と思いその場から立ち去ることにした。


まぁ…辺りに人がいないから、声をかけられたのは私以外居ないのだけど。何となく、ここから離れなきゃいけない気がしたのだ。


しかし次の瞬間、暗闇から伸びた白い腕に掴まれ、物凄い力で路地裏に引き込まれてしまった。

9話「家政婦とタバコ」→←7話「家政婦とMB・LB」



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よもぎ(プロフ) - コメントありがとうございます!まだまだ話数が少ないですが、ぼちぼち更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 7dc175d1d8 (このIDを非表示/違反報告)
すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 読ませて頂きました!とてもおもしろくてお気に入り&一気に全部読んでしまいました!!他のキャラとの絡みもあるということで更新楽しみに待ってます!!w (2018年9月23日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - ありがとうございます!先生推しです!オチはこれから他のキャラ達と出会い、親睦を深めていく…という流れで話を進める予定なので現時点ではまだ確定できていません。少しでも読者様に楽しんでいただけてとても嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年8月26日 13時) (レス) id: 7dc175d1d8 (このIDを非表示/違反報告)
- 読ませて頂きました。続きが気になりますし、主人公さんの性格がとても好きでした。オチは決まってないと言うことですが、よもぎさんは寂雷さんが好きなのですか?更新頑張って下さい。楽しみにしてます。 (2018年8月26日 2時) (レス) id: 5b4c0c9e60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よもぎ | 作成日時:2018年8月22日 1時

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