2話「家政婦と医者」 ページ3
寂「その分、君の話も聞けないけれど」
今度は目を伏せながら、寂しそうな表情をする。
『…先生は私のこと、よく知っているじゃないですか』
寂「そうだね。君がうちの病院に来た時から、ずっと見ていたからね」
『その節はお世話になりました』
寂「いえいえ」
なんて会話をしていると、リビングの固定電話から着信音が鳴り響いた。
『私が出ます』
寂「ああ、頼む」
名前が無い、誰からだろう…？
長く待たせるのはいけないと思い、受話器をとる。
『はい、神宮寺です』
返事をすると、向こうから聞き覚えのある声がした。
一「えっと…もしもし、朝早くにすみません。山田一郎です。寂雷先生のお宅で間違いないですか？」
少し動揺した様な声色に続き、“山田一郎”という名前が聞こえた。
もしやと思った私は『一郎？』と声をかけてしまった。
すると私の勘は当たっていたようで、明るい返事が返ってくる。
一「もしかしてAか！久しぶりだな！」
『うん、久しぶり一郎』
寂「おや、一郎君からかな？」
『はい。…先生に代わるね』
一「あぁ」
こちらに来た先生に受話器を渡すと仕事内容のような話をし始めたので、その場を離れテーブルを拭く。時々笑い声や楽しそうな声が聞こえる。
数分後、戻ってきた先生が私に言った。
寂「一郎君が、午後から君に会いたいそうだよ。萬屋の仕事もあるから、池袋に来てほしいって」
『そうですか…でもどうしよう、買い物もあるし…』
寂「私が帰りにお店に寄って行こう」
『でも、先生の方が帰りが遅いですし』
私が迷っていると、先生が大きな手で頭を撫でる。
寂「君にはいつも世話になっているから、買い物くらい私が行くよ。
それに、ずっと私の家にいるのも退屈だろう。気分転換だと思って、行っておいで」
ね？と微笑む先生に、私も自然と笑顔になった。
今日は、先生の厚意に甘えようかな…
『…ありがとうございます、先生』
寂「うん、気をつけて行くんだよ」
『はい』
頷いた先生の手が、するりと離れる。
…そういえば、池袋に行くのは久々だな。
かれこれ数ヶ月は行っていない。というか、新宿に来てから他の街へなんて行く暇がなかった気がする。
山田家のみんな、元気かな。
私が初めてみんなに会ったのはいつだったっけ？
たしか高校2年の春、1年生に池袋で知らない者はいないほどの不良がいるって話を聞いた時だ…
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よもぎ(プロフ) - コメントありがとうございます！まだまだ話数が少ないですが、ぼちぼち更新していきますので、これからもよろしくお願いします！ (2018年10月2日 23時) (
レス) id: 7dc175d1d8 (このIDを非表示/違反報告)
すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 読ませて頂きました！とてもおもしろくてお気に入り＆一気に全部読んでしまいました！！他のキャラとの絡みもあるということで更新楽しみに待ってます！！w (2018年9月23日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - ありがとうございます！先生推しです！オチはこれから他のキャラ達と出会い、親睦を深めていく…という流れで話を進める予定なので現時点ではまだ確定できていません。少しでも読者様に楽しんでいただけてとても嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年8月26日 13時) (レス) id: 7dc175d1d8 (このIDを非表示/違反報告)
俗 - 読ませて頂きました。続きが気になりますし、主人公さんの性格がとても好きでした。オチは決まってないと言うことですが、よもぎさんは寂雷さんが好きなのですか？更新頑張って下さい。楽しみにしてます。 (2018年8月26日 2時) (レス) id: 5b4c0c9e60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よもぎ | 作成日時：2018年8月22日 1時
