11日目 ページ13
「ちょっちょっと、とーしろ?」
わたわた慌てだした。それもそのはず。
俺はAの鎖骨の辺りに顔を近ずけ、チュッと口ずけした。さっきの仕返しだ。
「男の前で肌を無闇にだすな。食われちまうぞ。」
さぞ赤い顔をしているのだろうと顔を見ると、
薄く微笑んで優しく頭をなぜられた。思わずドキリとする。
「とーしろは優しいね。」
「はぁ?」
「私のこと心配してくれたんでしょ?ありがと。でも大丈夫なの。さっき言ったけど私はもう慣れてるから。」
「優しくなんかねェよ。それに慣れてても平気じゃねぇだろ」
「私の心はもう死んでるから。生きてるのは身体だけ。でももうすぐそれも終わるの。こんな汚い身体欲しいならあげるよ。」
余程酷い環境にいたのだろう。何かを思い出す瞳は濁っている。
少なくともAの心は死んじゃいねぇだろう。初めに見たキラキラした目がその証だ。
「話、戻すよ?」
そんなことねぇと否定しようとしたが、それを見越して遮られた。
「2年前かな?実験のし過ぎで身体にガタがきたの。んで、治療という名で捨てられちゃった。今はお兄ちゃん達を探しているの。きっと生きてるから。」
小せぇ身体で重いモン背負ってるのがよく分かった。壊れた身体で外に出されたコイツは何を考えたんだろう。
わしゃわしゃわしゃわしゃ
「ちょっ とーしろ??」
Aの頭を俺がやられたように掻き回す。陽の光を浴びて指を通るキラキラした白い髪はとても綺麗だった。
「んもぅっ」
パシッと手を払い除けた顔は林檎のように真っ赤で
「A、顔真っ赤だぞ」
更に赤くなった顔は不満そうに見える。
Aの赤くなる基準がキスでなく頭を撫でることに疑問を持つが、その赤い顔に胸が高鳴ったことは気づかない振りをしておく。
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作者名:さくら | 作成日時:2019年9月29日 0時