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あの話 ページ43

「あの……この間は、本当にすみませんでした」

「もう、前も言ったじゃないですか、坂田さんは何も謝るようなことしていませんよ」


そんな顔、しないでくださいな、と。席に腰掛けて店員が湯気のたつお茶をを持ってきてから数秒後、俺は言うと、彼女は困ったように笑う。

この間の罪悪感がまだ俺の中に燻っていたのもあるし、頭がぐちゃぐちゃで何を話せばいいのか分からずに飛び出してしまった謝罪なのだが、Aの母親はやはり優しい微笑を浮かべながらに俺のそんな謝罪を否定する。その時に見せた困ったような笑みが、Aのものと酷似していて、俺の心臓はまるで縮まったような嫌な音を立てた。流石は親子と言ったところか、あの日の彼女の面影がそこにはあって、それと同時にあの日に彼女から聞かされた言葉の数々が自動的に俺の脳内に流れ出した。悲しいくらいに平坦だった彼女の声が、頭の中に響いていった。そして、現実を受け止められない俺は、耳を塞ぎたくなる衝動に駆られてしまう。

顔を俯かせた。お茶から沸き立つ湯気を眺めて、言葉を探してみる。何か言うべき言葉はないだろうか、と。けれど、ほぼ混乱状態にある俺の頭では、謝罪の言葉くらいしか出てきやしなかった。あるいは、俺が言うべき言葉なんて、最初からなかったのかもしれない。

Aの母親が不意に「すみません」と店員を呼んだかと思うと、みたらし団子をひとつ注文した。すると「坂田さんは?」と彼女が問い掛けるものだから、「じ、じゃあ同じもので」と返してしまった。何かを食べる気分ではなかったのだけれど。

店員は「かしこまりました」と爽やかな微笑みを称えては厨房の方に消えていった。

Aの母親は、湯飲みを手にしてそれをゆっくりと口に含むと、ふぅ、と息をついては、言った。


「……娘から、あの話を聞いたんですよね…?」

「ッ」


その言葉に、俺は過剰に反応しすぎてしまった。肩が揺れた。心臓がドクンと跳ねた。

分かっていた。彼女がここに訪れたということは、この間のAの話についての件が絡んでいるのだろうということは。そんな気はしていた。


「……やっぱり、そうだったんですね」

「……はい」


向かい側に腰掛ける彼女を見る。よく見ると、化粧をして隠れてはいるものの、何処と無くやつれているように思えた。あまりよく眠れていないのかもしれない。それでも、彼女はまるでこちらを安心させようとしているかのように笑みを浮かべ続けたままだ。

彼女のこと→←客人



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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