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臆病者 ページ41

「……ねぇ銀ちゃん」


そう俺を呼ぶ声が聞こえてきて視線をその声の主である神楽に向けると、ソイツはいつの間にかテレビ画面からその目をこちらに向けていて、丸っこくて大きな青い目が俺をしっかりと捉えていた。不毛な思考を飽きもせずに巡らせる俺のことを。そういえば、Aが以前に、神楽の目は海みたいだと言っていたことがあった。その目を見ていると、海の中で、揺らめく水面を眺めているかのような気分になるのだ、と。神楽の目は青い。深い深い青色だ。その澄んだ色の目に見つめていられると、俺の中にある、誰にも見せたくない情けないものがすべて露見しているように思えて、更に自分が情けないもののように思えた。

それでも神楽から目を逸らさないのは、せめてもの意地のようなものなのかもしれない。この期に及んで意地もクソもあるかとは思うけれど。

新八はこちらの様子を窺いながら、そっと掃除機の電源を消した。万事屋にはブラウン管から流れる人の声だけが空間に浮かんでいて、けれどそこから聞こえる笑い声がこの場の静かな緊張を際立てているように思えた。

神楽はゆっくりと声を発する。ソイツにしては妙に慎重に、言葉を選んでいるようだった。


「…最近、どうしたアルか?……A姉のところ、全然行ってないよネ…?」

「…そうだな」

「…あの日、何か、あったの…?」


銀ちゃん、ずっと変だヨ、と。神楽は口にした。新八も掃除機を片手にこちらを見据えている。

あの日のことは、二人には話していなかった。自分の中でもまだ受け止めきれていないというのもあったし、あまりにもショックの大きいことだったから、話すのを躊躇ったのだ。けれど余計に、二人の不安を煽っていることには代わりなかった。

話すべきなのか、まだ話さないべきなのか。俺は迷う。揺らぐ。けれど、自分自身の口でその言葉を発するのには、相当なまでの気力と勇気が必要で、告げようとすると喉が詰まったように声を発することを拒絶するのだ。

俺は何も出来ない情けない奴な上に、臆病者だった。


「…いいや、何でもねェよ」


そう言いながら俺は立ち上がり、「散歩にでも行ってくらァ」なんて。本当はただ、何でもないわけがないと言及されるのを恐れて逃げたかっただけなのに。

すれ違い様、新八が「銀さん」と俺の名前を小さく口にした。その声に足を止めることなく、俺は廊下へと足を踏み出した。


その時だった。


「ごめんください」


廊下のその先の玄関から、そんな声がした。

客人→←すべてが嘘だったかのような



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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