もうすぐ ページ4
「もうすぐ見えてくるぞ」
「ホントですか!思っていたよりも近いんですね!」
Aが弾んだ声をあげる。さっきまではなんだか絵本を読み聞かせるときのような、静かで穏やかな声をしていたのに、今度は子供みたいな声をしていた。それほど、これから向かう場所を心待ちにしていたのだろう。まだ入院しているときから、彼女が行きたいと望んでいた場所だから。「楽しみだなぁ」と、Aは呟く。
辺りには車はない。この時期にこんな場所に用がある人もそう居ないのだろう。町から外れたここらへんに店なんてあまりない。それに、この季節のこの道は町中よりもずっと冷え冷えとしている。俺の原チャリだけがこの道を走っていて、それがなんとなく気持ちいい。
更に暫く走っていれば、進んでいく道の先に大きく広がる青に夕日の光が溶けているのが見えた。オレンジ色の光がそこに反射して、ゆらゆら揺れる表面をキラキラと輝かせている。冬の澄んだ透明な空気がその輝きを更に綺麗に見せているような気がした。
「わ、見えました!海!!」
俺の後ろから前方を見ていたのだろう、Aが再び無邪気な声をあげる。もうちっとで着くよと俺は応える。
そう。Aが行きたいと以前から行っていた場所は海だった。5歳の頃から病を抱えていた彼女は、テレビなどでしか海を見たことがなかった。住んでいるあの住宅街からはそれなりに距離があるため海のにおいを嗅いだことすらなかったのだという。5歳じゃ海水浴に連れていくには幼すぎるし、納得できた。
神楽の目は青い。まるで海みたいだと、Aは言った。海の中で仰向けになって、そこから水面を見ているようだと。そう言った。そう思ったら、本物の海を見てみたくなったのだそうだ。
その目で海を見るのが初めてなのだ、こんなにもはしゃぐのも無理はない。「すごーい!海のにおいってこんな感じなんですねー!」と楽しげな声を聞きながら俺は前を向いては笑みを浮かべていた。ごく自然に浮かんだ笑みだった。
俺も、ガキの頃に初めてのものに触れたとき、こんな感じだったのだろうか、なんてことを思った。
海の方角へ進んで、緩やかなカーブを曲がっていくと、海岸に降りる階段があって、そこの傍に駐車スペースがあった。そこに入っていき、原チャリを止めた。
俺とAは原チャリから降りて、ヘルメットを外す。
「わぁぁ…やっぱり広いんですね!大きいんですね!日が沈みますね!」
「これから月も昇るよ」
砂浜降りてみるか、と言うと、はい!と彼女はいい返事をした。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年6月1日 22時