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この世界に生きるもの ページ5

砂浜へ降りることの出来る小さな階段に足を進め、俺達は並んでその階段に足をかけた。もうすぐそこに砂浜があって、風で飛ばされてきたのだろう砂粒が階段に海の湿気で張り付いたようにくっついていた。階段はすぐに終わり、砂浜に足を踏み入れると、Aは「おぉ、なんかふかふかしてる」とその場で何度か足踏みをした。俺も砂浜に足を付くのは思えば久し振りで、その感触を懐かしく思った。
ザァァ…と音をたてて波が複雑な形をして行ったり来たりを繰り返している。波打ち際の近くには打ち上げられてきたのだろう、海草らしきものが横たわっていた。

お世辞にも綺麗だとは言えない海岸だ。夏になれば海水浴場としても使われるけれど、ここはかぶき町から一番近いというだけで主に海水浴客が集まるのはここではないところだ。それに、まだ冬が空気を支配している今は特に手入れもされていない。捨てられたのか、それとも海から打ち上がってきたのか、ゴミが点々と落ちているし、何処か寂れた雰囲気が漂っている。

あまり遠くの海岸に連れていくのも躊躇われたのでここにした訳なのだが、それでもAは真っ直ぐに水平線を見据えて、「とっても綺麗です」と呟いた。


「なんだか、来たこともないのに懐かしい気分になりますね」

「あーなんかそれ分かるかも」

「この世界に生きるものはすべて海から上がってきたって話を昔何処かで聞いたことがあります。だからですかね?」

「そうかもな」


そんな何気ない会話も波がさらっていくようだった。誰も居ない砂浜。俺達以外は誰一人としてここには居なくて、車の音だとか、そういう生活感を感じる音が何もしないので、この世界には俺達二人しか居ないような気分になってくる。

なんて、俺までなんかポエミーなことを考えてしまっていた。声に出してはいないものの、少し恥ずかしくなってきた。


俺のそんな内心を知らないAは、砂浜に足跡を残しながら俺よりも前を歩いて、そして急にしゃがみ込んだ。


「どうした?」

「貝殻がありました!」


と、俺が彼女を覗き込むように見つめれば手のひらに乗せた小さな貝殻を見せてくれた。白い貝殻。付いた砂を払っては、「可愛い」とAは密やかな声で言う。


「持って帰ればいいんじゃねーの?」

「はい、そうします」


頷いて、Aは立ち上がり鞄の中にあったティッシュを一枚取り出して貝殻を包むと、それを丁寧に鞄にしまった。

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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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