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拒絶 ページ30

すぐには、その言葉の意味を理解することが出来なくて、言葉を発しようとしていた口が間抜けにもポカンと開いたままになってしまっていた。もう喉にまで出掛かっていた言葉が行き場を失ってその場で詰まってしまったみたいに急に息苦しくなってきて、口を閉じては生唾を飲み込んだ。俺は呆然としながらAを見据えていて、先程まで俺のことをじっと優しい眼差しで見つめてくれていたAのその目は、今は俺の居る位置とは反対側の窓の方を向いていた。カーテンは閉まっていて月の明かりも病室には入ってきていない。

こんなにもあからさまに、不自然に彼女から目を逸らされるのは初めてのことで、そのことでも俺は戸惑う。けれど、それよりも彼女が口にした言葉の方が、俺の心を大きく揺らしていた。小さく浅い呼吸を何度か繰り返してから、俺は一度深呼吸をした。これでは動揺して、何も言うことが出来ない。何も出来ない。兎に角少しでも落ち着かなければと頭の隅で冷静に思った。

そうして俺は何とか平常心を保っているように繕いながら、それを心掛けながら口を開く。


「……悪い。急すぎたよな、しかもこんなときに」

「…」


Aはこちらを見ない。言葉も発しない。けれど彼女の表情が晴れていないことは一目瞭然であった。不機嫌そうにも怒っているようにも見えないけれど、なんだろう、何とも言えない顔をしていた。迷っているような、怯えているような。俺だけじゃない。いや、もしかしたら、彼女の方が動揺しているのかもしれない。

確かに無神経だったかもしれない。いや、無神経だったのだ。確実に。こんなときに、やはり焦ったように伝えるべきじゃなかった。押し付けているのと同じことじゃないか。今更後悔がとてつもない勢いで俺へと詰め寄った。


「……ごめん」


俺は呟いた。Aは口をギュッと引き結んだ。唇の両端が震えていた。


『ごめんなさい、その続きは、あまり、聞きたくない、です』


──拒絶されたのだろうか。

そう考えた瞬間に、ズキッと痛みが走った。それは俺の繊細な、恐らくは心と呼ばれるものが発した痛みなのだろう。俺は堪らなく視線を足元に落とした。

どうすればいいのだろう。どうにかしようとすることすら間違っているように思えて、どうしようもなかった。逃げ出したくなった。心臓が嫌な音を立てていて、それまで俺のことを責め立てているようだった。


人に拒絶されるのが、こんなにも苦しいことだなんて、知らなかった。




「……銀さん」

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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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