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どうして ページ31

「……銀さん」


と。その声が。何処か、端々が震えているように聞こえるその声が俺の名前を呼んで、俺は恐る恐る顔を上げた。Aはまだ窓の方を向いていて、揺れもしないカーテンを見つめ続けている。そこに何か重要なものがあるのだと言う風に。けれど、その表情が、俺が顔を俯かせる前のものとは少し変わっていることに気付いた。その表情は、悲しそうだった。世界にある悲しみを凝縮させたような、そんな悲壮さがあった。今にも泣き出して、嗚咽を漏らして、酷く悲痛な声で泣き叫んでしまうのではないかと思ってしまうくらいに。こんなにも思い詰めたような彼女の顔を、俺は見たことがなかった。

息を呑んだ。今度こそどうしようもなくなった。俺の続けようとした言葉が。俺が伝えようとした言葉が、彼女をこんな顔にしたのだろうか。もしそうなのだとしたら、俺はまさか取り返しのつかないことをしてしまったのではないか。もういつも見ていたあの日溜まりのような笑顔が見られないような気がしてきて、恐ろしくなった。

Aはこちらを見ないままに、続ける。酸素マスクを隔てて見える口元は、無理矢理にでも笑おうとしているように歪に歪んでいた。


「……ごめんなさい……私」

「謝らなくていい。俺が、悪かったんだ」


こんなときにおかしなことを言い出そうとしたから。彼女からの言葉を聞くのが辛くて、思わずそう言ってしまう。きっと彼女の言葉を聞くべきなのに。これ以上胸の痛みが酷くなるのが怖くて、傷付くのが怖くて、俺は事故防衛をしようとした。けれど、彼女は小さく、首を横に振った。そして、何かを覚悟するように息を大きく吸い込んでから、Aは言った。


「私、銀さんの気持ちには、応えられません」

「……ん」


どうして、と。言いたくなった。けれど、言えなかった。言えるわけがなかった。それすらも、彼女を深く傷付ける言葉のように感じた。

出会った当初から感じていた。彼女は、些細な言葉でも、何気ない言葉でも、意図も簡単に傷付けることが出来てしまうような、そんな危うさがあった。


俺はそのままもう一度謝ってから、帰ろうとした。この場に居づらくて。気まずくて、逃げようとしていた。が、彼女が、更に続けたのだ。


それはあまりにも、想像を絶するような、予想だにしなかった言葉だった。







「……私、死ぬんですよ」




「………、……は?」





その言葉が、俺の鼓膜を揺らし、脳みそを揺らし、視界までもが揺らいでいるような感覚が、俺を襲った。

何一つとして→←拒絶



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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