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そんな彼女に ページ28

「苦しくて怖くて、どうしようもなかったけど、その声があったから、私は救われていました。目の前が真っ白になっていく中で、銀さんの声が聞こえていたから、一人じゃないって……すごく、安心できたというか……」


身体がどんどん冷たくなっていくのに、暖かかったというか、と。Aは言った。


「だから、自分を責めないでください」


私は心の底から、銀さんにありがとうって思ってますから、と。

その言葉に胸の中でどす黒い錘のようになっていたものが、罪悪感だとか焦燥感だとか無力感だとかが複雑に合わさって出来たも重たいものが、す、と軽くなったような気がして。俺は許されていいのか、こんなことを言われていいのかと戸惑いながらも、それでも、今度はその言葉に救われていた。俺は本当に、何も出来なかったのに。無力にただ狼狽えて、怯えていただけなのに、こんな風に許しを貰えていいのか。そう思いながらも、その言葉にどうしようもなく、泣きたくなる。張り詰めていたものが柔らかくなって溶けていくようだった。

Aが優しい眼差しを俺に向ける。俺があまりにも情けない顔をしているせいか、Aはなんだか困ったように微笑んでいる。俺は一度、強く瞬きをして。また目を開けて、彼女を見据えた。そして、俺は小さく呟く。


「ありがとう」


そう言うと彼女は首を横に振って、「それを言うべきなのは、私なんですって」と笑った。


「……ありがとうございました。また助けてもらって、名前を呼んでくれて」


きっと内心では、落胆や失望に満ちているだろうに。また不条理な理由で有無も言わせないままここに戻ってきてしまったことに、思うことがあるはずなのに。Aはこんなにも、綺麗に笑う。俺なんかに、こんなに、優しい言葉をかけてくれる。

俺はいつも、彼女に救われてばかりだ。そう言ったら、彼女はそんなことないと首を振るだろうけれど。


でも、本当にそうなのだ。


桜の季節の木漏れ日のように優しくて、暖かで。周りにあるものすべてをそれで照らし、そして包むような。

まるで、春に祝福されているような、彼女。



そんな彼女に、俺はいつしか惹かれていったのだ。


「……銀さん?」


真っ直ぐに、俺にしては真っ直ぐに、彼女を見つめる。不思議そうに、Aは首をかしげては俺を見つめ返した。


「あのさ」


タイミングを見計らったようにうるさくなっていく心臓を無視して、俺は続ける。


「……もうひとつだけ、言いたいことがあるんだ」

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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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