切っ掛け ページ10
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ヘルメットを被って、原チャリに跨がって、エンジンの音を響かせながら元来た道を辿るように走っていく。走る程に海から離れていって、波の音が遠ざかっていって、やがて海のにおいもしなくなっていった。けれど顔や髪が潮のせいでベタついていて、まだ海はすぐそこにあるような感じがする。帰ったら風呂に入らなきゃな、なんてことを思う。Aは俺の背中で、「海と言えば夏って感じがしてましたけど、冬の海ってのも中々いいものでしたね」と話してくれていた。
冬に海に来るなんて俺もこれが初めてのことだったけれど、確かにそうだなと素直に頷けた。共感できた。肌をじりじりと焼き付けてくるような日の光と暴力的なまでに青い空と見る海もいいけれど、静かで澄んだ空気の先に茜色が揺らめく海も、それはそれは綺麗だった。またにはこういうのも悪くないかもしれない。
海の話をして。またかぶき町の話をして。町の人々の話をして。そんな話をしながら、速すぎず遅すぎないスピードで彼女の自宅へと向かっていく。彼女の声を聴きながら原チャリを走らせるのが、俺は結構好きらしい。
「こんなにいいクタクタは初めてかもしれません」と彼女は言った。病院での検査だとか発作を起こして疲れてしまうことはあったけれど、一日楽しんだ後のクタクタは、経験していなかったのだと言う。Aが退院してから今日までの暫くの間、Aは体力をつけるためにハードではない運動をしていたらしいけれど、それでも今日は疲れただろう。人が溢れる所にも行ったし、見知らぬ人と会ったりしたのだし。
でもそれを心から楽しんでくれていたのだと改めて知ることができて、連れてきて良かったと俺は思った。彼女が抱えている何もかもを忘れて笑えることが出来たなら、尚いい。それは彼女にしか分からないことだけれど。それを俺から尋ねるのは、なんだか違うような気がした。
Aはよく、『初めてだ』と俺に伝えてくれる。初めて見た。初めて食べた。初めての体験だ、と。それを口にする度に目をキラキラと輝かせていて、そんな彼女を見ているのも俺は好きだった。
けれど、考えてみればそれは俺も同じことだった。彼女に出会って、初めて甘味を食べることを自制したし、初めて自分から小説を読んだし、初めて冬の海にも行った。俺にとっても、彼女と過ごす日々は初めてのことの連続だった。
Aは俺にとって、色々なことへの切っ掛けだった。
同じように彼女にとって俺が切っ掛けになれていたら、嬉しいと、そう思う。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん！いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん！！シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね（笑）ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします！！！ (2019年8月6日 23時) (
レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん！続編おめでとうございます！リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...！嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ！ (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います（笑）二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます！(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ！ 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ！ 応援してます！ (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん！ありがとうございます！！ですね！銀さんと言えば銀色です！夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです（笑）そう言って頂けるとやる気が出てきます！頑張ります！ (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2019年6月1日 22時
