【銀魂】君と共に生きる春 6【坂田銀時】

何年も何年も ページ34

Aside


秋は好きだ。季節の中で何が一番好きかと問い掛けられたら、直ぐ様春だと答えるけれど、その次に秋だと私は続けるだろう。春とは違って、暖色系の色に世界が染まっていって、それをぼんやりと、窓から眺めるのが好きだった。そろそろあそこの紅葉が赤くなってきたなとか、あそこの銀杏は色が変わるのが早いなとか、そういうことを考えているのが好きだった。私は外の世界に触れることが極端に少ないから、だからこそ外の世界に見つけられることが多くあったと思う。病室から見える景色が江戸の町を見渡せるということもあるけれど。

私は何年も何年も、世界が巡り行く季節に塗り替えられていく様を眺めていたのだ。この狭い病室で。


その日はそんな秋で、すっかり葉の色が色付いて、木の葉が風に吹かれて落ちていって、だんだん木が寒そうになっていくなぁ、なんて思っていた頃だった。定期的に行われているはずの検査が予定の日よりも早まり、行ったのが数日前で、私と、それから両親は、主治医の先生に呼ばれて久し振りに家族揃って先生に招かれた部屋に居た。仕事が忙しくて中々面会に来られないお父さんがわざわざ休みを取って来ていたから、あぁきっと、何かがあるんだな、と勘づいてはいた。けれど、特に不安になったり、胸がざわついたり、なんてことはなかった。

先生は私、お母さん、お父さんと、私達家族の顔を見回して、そして最後に再び私のことを見据えて、表情を変えることなく、けれどその固められた表情の奥に悲痛なものを抱えているような難しい顔で、口にした。


『先日の検査の結果、Aさんの病状が急激に進行しているのが分かりました。最近、発作を起こす頻度が増えていたのは、このためでした』


検査をする前、私の身体は明らかにおかしかった。軽度と重度と波はあれど発作は毎日のように起きるし、身体が怠くて食欲もなかった。家族は勿論鶴見さんも私を酷く心配していたし、先生もその異変に気付かない訳がなかった。そして検査が行われた訳なのだが、やはりその結果はよろしいものではなかったようだ。

私にはよく分からない難しい単語を幾つも先生は並べていたけれど、それを静かに聞き流していた。私の心臓はもうそろそろ限界なのだろうと、他人事のように思っていた。


『先生…それで、あの……どのような治療をしていけば、こよ状態は改善されるのでしょうか…？』


何かにすがるように。乞い願うように、お母さんは先生に尋ねた。先生はその言葉に一瞬視線を下の方にずらして、お母さんを見据えて、ゆっくりと応えた。

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