２人の時間は交わらない【朔間零】【完】

幼馴染の言葉 ページ26

A)…




高)A、大丈夫？



A)うん



いつも通り、翠と肩を並べて歩く。
いつもより太陽が高い位置にあるとはいえ、眠気という悪魔が私を誘い出す時間だった




高)無理して聞かなくてもいいし




A)それは私が嫌だ。翠にいつまでもそんな顔させたくない



高)…そ




本当に正気のない返事だ、翠らしくない。
私は腕をつねったりして眠気を何度も振り払い、幼馴染の家に上がる
翠の部屋は朝も見たのに、部屋の主が沈んでいるからか可愛いゆるきゃらたちも暗い表情をしているように見えた




高)…



A)ねぇ、翠。翠は、私が夜が来る前に寝ちゃう事で悩んでた時、ずっと傍にいてくれたね。励ましてくれたね。そのままでいいよって…言ってくれたよね
すごく嬉しかった、救われたの。だから私も翠の力になりたい





高)…



言いにくそうにしてるなら、私が会話の門をこじ開ける。
でも、翠は下を向いたまま自室だというのに体育座りをしている。私はその横に座って近場にあった猫の人形を翠の腕にぐりぐりっと押し付けた




A)「翠君。Aちゃんを困らせたくないから黙ってるんだよね」



高)！！




A)「小さいころから変わらない翠君の優しいところだね。でも」
…私は、もっと我儘言ってほしい。それで翠が笑顔になれるなら、言ってほしいよ





私の言葉に反応してか翠はゆっくり顔をあげた
その顔はひどく悲しみに歪んでいて、見たことないそれに息をのんだ





高)Aが、たまに辛そうだから…朔間先輩といるとき、悲しそうにするから




その言葉が理解できなかった



でも、心臓は痛いくらい反応した

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