No.24 ページ24
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『ふわあぁ…』
「寝不足か？」
『んー、寝ても寝ても寝足りない』
あれから私たちは毎朝登校を一緒にするようになった。
シロのいる公園で待ち合わせをして、シロに行ってきますの撫で撫でをして学校に向かう。それが当たり前になってきているのが、最初の私から考えれば不思議な話だ。
今も船を漕ぎながら歩く私に、轟くんは心なしかヒヤヒヤしているようで、大丈夫なのにと思いつつ彼のカバンの紐を掴んでみる。
「お、どうした」
『これなら怪我しないでしょ？…あ、猫のマーク。可愛い』
そのまま寝てしまおうかと思ったが、ふと目に入った轟くんのカバンに付いている猫に心が奪われる。
何というか、彼がこんなのを付けていたなんて意外だった。証拠に今まで全く気づかなかったのだから。
「猫好きなんだな」
『うん。でも轟くんも好きでしょ？』
「まぁ、どちらかと言われればな」
そんな他愛もない話をする平和な朝。でも私にとっては、とても大切な時間なのだ。だって、今までは羨ましいなと眺める側だったのだから。
口元が上がりそうになるのを髪で隠しつつ、ギュッとカバンの紐を強めに握ってみる。轟くんはチラリと私を見て微笑むだけで何も言わなかった。
もし、こんな風に他の誰かと仲良くなれたのなら。
そう淡い期待を抱きそうになったが、過去を忘れたわけではないので、すぐに頭を振って考えるのをやめる。
自分に向き合う為に高校に来たものの、あと一歩がどうしても踏み出せないのだった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
