第312話 ページ38
簓「…ッ…はぁ…っ…」
そして全力疾走でその場から駆け出して、オオサカの夜の街をある地点に向けて走り出す
俺とAの生まれた始まりの地点
俺がある時から帰る事も考える気にならなくなった、だけど確かに消せない思い入れのある場所
簓「…ッ…見っかった…
鏡は…?」
家に今もオトンが住んでいるのかなんて知らん
一軒家に1人はあまりに広すぎるやろから
俺とAがまだおる頃はオトンもここにおったんやろけど、ある時からオトンがどない過ごし方をしとるかなんて考えの中にも含まれていなかった
簓「…昔は円満な家庭やったはずよな
なぁ、お前も覚えとる?お前が生まれた時、俺もせやけどオトンもオカンもホンマに嬉しくて笑ってたんやで
お兄ちゃんになるんやよ、なんて言われて嬉しかったんやで、俺は」
そんな遠い過去の記憶を思い起こしては、ある時自分が言った言の葉を思い出す
簓「…あの時から俺で妹守るって決めてたはずなのに、何でこんな事になってもうたんやろな
俺もきっと色々な間違いは起こしてきてるはずやけど、お前が離れるって言うんなら俺は過去の俺との約束を果たすだけやで
…「絶対に妹だけは自分で幸せにする」って」
妹を腕に抱いた時、幼い自分は守るべき存在としてそれを認識した
そして必ず守って、一緒に幸せに生きて、たくさん笑って一緒に幸せに生きていく事を夢に抱いた
それが壊れる出来事は色々あったかもしれないけど、その自分の誓いが今も消える事はない
簓「…せやから俺は「やる」んやよ
それを壊すのがお前の方やって言うんなら、お前は俺が「やる」だけや」
そない言うて、敵意も味方意識もない「妹を思う」という単純でかつ小難しいものを俺の中で抱く
一言で説明はつけられないような因縁も縁(えにし)もある、同じ時間を刻んできた自分と近い血族への思いは真っ直ぐである反面で同時に歪んでいる
簓「…鏡はどこや?
最後の色は…って…オレンジ?」
最後の鏡を見つけ出せば、それはどこか「俺ら」オオサカの色を想起させるオレンジやった
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咲樹(プロフ) - まさかの監督生と出身同じで軽く運命感じてます!これからも投稿頑張ってください! (2021年12月2日 12時) (レス) @page29 id: b53a17c756 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年8月30日 7時