125話 今更もう遅い ページ8
溢れそうになるのを必死に抑えていた感情がどろりと浸食するように零れた。
Aは言葉が詰まり、代わりに目を見開く。
「友達としての意味じゃない。性愛的な意味で好きなんだ。手を繋いだりキスしたり、そういうことしたいってずっと思ってた」
Aの右手に玲王の手が重なった。
愛しそうに指を絡めたり手の中を撫でるその手つきはまるで恋人にするそれだ。
「こんな風に組み敷いたらどんな顔するのか、試してみたくなるのもお前だけなんだ」
今度は優しくソファに倒される。
二人分の体重でソファが沈んだ。
遊び疲れて寄り添いながら寝ていた子供の頃、純粋だったその二人はすっかり大人の色に染まりソファの上で熱を求めるかのように重なっていた。
「Aが欲しい。Aの宝物になりたい」
首筋に柔らかい唇の感触が伝わる。
小さく吸ったり、首筋に沿って舌を遣わせる。
たまに甘噛みされ、肌が粟立って体がぴくりと痙攣した。
くすぐったさを逃がすために足の指を丸める。
声が出そうになるのを我慢して、絡められた手を握った。
玲王もそれに反応するように優しく握りさらに指を絡める。
頭の中が浮わつくような心地のいい感覚に陥っていた。
どこかで玲王ならいいと思う自分がいる。
玲王になら自分の知らないところまで暴かれ
てもいいと思っている。
首元から玲王の顔が離れる。
薄暗い中、夜景がかすかに玲王の顔を照らした。
白い頬が紅潮して目は潤んでおり、熱っぽい。
右手を光が透くほど肉の薄いAの耳へと伸ばし、そのまま頬へと滑べらせる。
愛しそうに頬を撫でると、Aの唇を親指でなぞった。
ふっくらとした唇は乾燥していて指に引っかかる。
アメシストを思わせる双眸がゆっくりと近づいてくる。
恋愛経験のないAにも何をされるか想像がついた。
多分、そういう雰囲気で、そういうことを今からする。
嫌じゃない。
だって玲王だから。
自然と玲王に顔を近づけていた。
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モヨモヨ(プロフ) - 簡潔おめでとうございます!!!マジですきだ!!きまさんの文でしか得られない栄養が、ある。言葉選びが毎度素敵だし、なにより表現のしかたがドストライクすぎる。すき 小説を書いてくれてありがとう。きまさんも小説も大好きだ……更新お疲れ様でした! (1月3日 1時) (レス) @page48 id: 3d85c557d8 (このIDを非表示/違反報告)
コン(プロフ) - 初コメ失礼します!完結おめでとうございます!!主人公と凛ちゃんの関係の移り変わり方が好きすぎて何回も読み返しました。ずっとドキドキしながら読んでいました!本当に大好きな作品です!完結したのは正直悲しいですが素敵な作品をありがとうございました!! (12月31日 20時) (レス) id: 367d94bba3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじゅん(プロフ) - はじめまして、初めてコメントします。貴方様の書く凛と男主の関係性がものすごく大好きです。男主くんの掴めそうで掴めない距離感のもどかしさだったり、凛のほろ苦い心情が読んでいて「はぁ〜っ……!」とキュンとします。これからも続きを楽しみにしております。 (6月30日 22時) (レス) id: 9723d369eb (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - リアムさん» コメントありがとうございます!個人的に凛ちゃんさんを書くの苦手なので続きが気になる展開にできて嬉しゅうございます!ぶっ倒れない程度に更新頑張ります!! (6月18日 19時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
リアム(プロフ) - 凛!一体どうしたんだ〜!続きが気になるので、楽しみにしています!無理のない範囲で更新頑張ってください! (6月17日 9時) (レス) @page32 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年4月12日 22時