57話 助けろください ページ28
「そういえばお前、花火誰と見んの?」
休憩所となった空き教室、少し冷たくなったミルクレープを頬張っているAに潤が心配そうに尋ねる。
「誰と見るってそりゃあね……。うーん……」
凛より友人はいる方だと思うが、かといって花火を見る約束をしている寂しい男友達はいない。
つまり、一人。
潤は彼女と見るらしい。
くたばれ。
「くたばれ」
「なにがあったその数秒に」
「別に。たかが花火になんでそんなに盛り上がるかな〜。あんなのただの炎色反応じゃん」
「だからモテねえんだよ」
「は?」
ミルクレープが入っていた紙袋をゴミ箱に投げ入れ、背伸びをする。
日も段々落ちてきて、あと数分も経てばとっぷりと夜の色に包まれそうだ。
人でごった返していた廊下もまばらになって、窓の外に目を向ければ生徒がグラウンドに向かって歩いている。
もうすぐ花火が上がるからだ。
「そろそろグラウンド行こっかな。Aどうする?一緒来る?」
「俺、焼きそば買ってから行く。どうせ邪魔になるだろうし」
「ぼっち飯……」
「Aの殺意がログインした」
逃げるように教室を出ていった潤の後ろ姿を見つめながら、Aも立ち上がって身支度をした。
__________
人の波に逆らって歩いたせいか、体に疲労感を感じる。
花火の打ち上げがもうすぐ始まりそうなので足を早めた。
目当ての屋台が見えて、安心して肩の力が抜ける。
と同時に自身で力んでいた力ではない圧力が右腕に伝わった。
引き止めるかのように掴んだその手は手入れが行き届いた綺麗な手で、それでいて見覚えのある手だった。
「おい」
そして、頭上から降ってきた声で確信する。
「はーい。なんでござんしょう!」
本日、二度目の凛との再会。
ふざけて言ったAとは真逆に、凛は深刻な顔つきでAを見下ろしている。
薄い唇がゆっくりと動き、言葉を紡ぐ。
「助けろ」
「はい???」
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時