91* 何故かいつもピンチヒッター ページ43
「……ん、…」
「―…あらおはようAちゃん」
彼女が目を覚ますと心地よい南日があたる畳の匂いがした。
そして彼女に優しく声をかけたのは、今日も今日とて美しい、ピンクの着物を着た女。
「お妙、さん…」
「昨日は吃驚りしたわ。あんな処で傘も差さず立ってるんだもの」
「え…私何か、記憶飛んでる…覚えてない」
「無理ないわAちゃん。私が声を掛けた途端崩れ落ちたんですから」
.
もう人通りの少なくなった先刻午後10時。
偶然通り掛かったお妙が目にしたのはざあざあぶりの雨の中一人佇む見知った洋服の少女だった。
「…Aちゃん?」
「…………お妙…さん…」
午前には綺麗だったのだろう化粧は崩れ、雨の冷たさで真っ白に冷えた顔が虚にお妙を覗く。
慌てて駆け寄ったお妙がその手を掴んで、あまりの冷たさに息を呑んだ。
「ちょっと…! Aちゃん、冷え切ってるわ…!
一体いつからここに…!」
「今日、は、祭がある、から」
「……祭ならとっくの昔に雨で中止になってるわ」
「それでも………約束した、の」
「総悟と、」力無く瞬きした彼女の頬に雨か否か定かでない水が流れた。
同時に膝から崩れ落ちるA。
彼女を抱きとめたお妙は、自身が濡れるのも承知で傘を捨ててAを強く抱きしめた。
.
「まだ冷えてるでしょう? まぁ飲みなさいな」
「お妙さん……………お味噌汁作れたんだ………」
「あら?今すぐ締め出してあげてもいいんですよ?」
「すいません」
お妙が作ったとは思えない程香りのたつ白味噌に若干躊躇はしたが本当に普通に美味い味付けに彼女は2口目を啜った。
「Aちゃん」
「ふぁい」
「元気になったら銀さんを訪ねなさい」
「……銀ちゃん?」
「ええ。話がね、あるみたいだから」
彼女の箸が止まる。
お妙はその様子を一瞥して自身もお茶を飲む。
Aは知らないだろうが……実はこのお妙、昨日結構動いているのである。
「昨日は銀さんここに駆けつけてきてくれたのよ」
「……そうだったんだ……あの、」
「……沖田君は来てないわ。ごめんなさいね」
「…………そう、ですか」
ぎゅ、と膝の裾を掴むA。
その様子にお妙も神妙な面持ちで見つめていた。
__沖田君も銀さんも……好きな女の子にはどうしてこうも不器用なのかしら。
かくいうお妙も彼女の事を一目置く程思っている。
…昨日血相を変えて彼女の為に走り回るくらいには。
――事は昨日に遡る。
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桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時