２９ ページ29
side 智
今日は雅紀さんと一緒に寝た。
雅紀さんのちょっと高めの体温が気持ちいい。
胸の鼓動が気持ちいい。
優しく触れる指先が気持ちいい。
情熱的なキスも気持ちいい。
名前を呼んでくれる甘い声も気持ちいい。
何より俺の事を愛してるって言っていれる心が気持ちいい。
こんな汚れきった俺にそんな事を言ってくれるのは雅紀さんだけ。
客の中にもそんな事言う人はいるけど俺とは別に大切なモノがあるのを知ってる。
俺にはない家庭と言う暖かなモノ。
俺にはそれがどんなモノかわかんないけど……
俺の小さな世界は雅紀さんでできてる。
雅紀さんがいなければとっくに生きてない。
じゅんに一目会いたいとそのために生きてきたけど、雅紀さんがいなければとっくに生きる事すら諦めていただろう。
母さんがじゅんを連れて姿を消し父ちゃんが首を吊って、やって来た男たちに訳のわからないまま連れて来られて２０年以上経った。
潤くんが俺の弟のじゅんなのかはわからない。
凄く似てるけど。
連れられて行く時、咄嗟に棚の上にあった写真立てを手にした。
見開きのそれは小さな俺が座って産まれて直ぐのじゅんを抱っこしている写真。
もう１つは多分、保育園の卒園式。
短パンのスーツを着てじゅんを抱き締めて２人でくすくす笑ってる写真。
それだけを持って２度と帰る事のない家を連れ出された。
その写真のじゅんが大人になったらこんな感じのイケメンになるのかなって思うくらい同じ眉毛、黒子、瞳。
でも俺の想像でしかない。
違うかもしれない。
お手伝いさんにするって決めた後に思った。
だけどそれでもいいんだ。
本物のじゅんに何もしてやれないから、代わりにこの潤くんに全てをあげようと思った。
俺と同じ境遇の彼に。
違いは彼には弟が残され俺は連れ去られた事。
彼には弟を守る力があった事。
俺は自分の身すら守れない子どもだった事。
何よりこの先、外の世界でお天道様の下を歩いていける事。
俺は真っ暗な闇の中でしか生きていけない事。
結局、仕事優先で小学校から学校なんて行ってない。
だから外の世界で生きる知恵も術も知らない。
いつか彼がここから解き放たれた時……俺は祈り願うだけなんだ。
じゅんと潤くんの幸せを……
2度と触れられないし会う事すら出来なくなるけど今がとても幸せだから。
それだけで生きていける。
だってたった３年じゅんと一緒にいただけでその後の２０年以上を生きて来れたんだもん。
きっと大丈夫。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼羽(プロフ) - 夏樹さん» ありがとうございます。ちょっと寄り道してましたが、続き始まりました？ので、これから後半に向けて頑張ります。応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月24日 22時) (
レス) id: 878a08305b (このIDを非表示/違反報告)
夏樹 - 楽しみにしながら、小説の続きが読みたいです。 (2021年1月24日 22時) (携帯から) (レス) id: f3c5bb2111 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。面白いそう言っていただけて嬉しいです。頑張りますので、よろしくお願いします。 (2021年1月17日 11時) (レス) id: 878a08305b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - 小説面白いです更新待ってます (2021年1月16日 23時) (レス) id: c3d8a6651c (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - 明さん、コメントありがとうございます。毎日２話が限界で申し訳ないです。時々滞りますが……寝落ちして更新しそびれる……なんて事もありますが。できる限り頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2021年1月12日 21時) (レス) id: 878a08305b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年12月29日 16時
