２ ページ19
帰るとやっぱりキャンバスの前。
テーブルの上は……ペットボトルのみ。
プレートが消えてるって事はちゃんと食べてくれたんだな……よし。
ちゃんと洗って片付けもしてる。
こういうのきちんとしてるよね。
キッチンカウンターの上にメモ。
『ごちそうさま〜。
いつも美味しく作ってくれてありがとう』
そんなメッセージまで書いてくれてる。
しかも絵の具でカラフルに。
こういう律儀なとこもあるよね。
で、食べてまた集中してるんだ。
飲まず食わずで集中するよりマシになった。
好きな事するのに寝食忘れる人だった。
生き甲斐とも言える趣味を持つとそうなるのか？
どこかの誰かさんも趣味に対してそうだったよな。
奴はゲームだけど。
しっかり食べて再び集中してるあの人の邪魔をする気にはなれなくて、そのまま夕食の準備に取り掛かる。
キッチンに立っても見える位置で集中してくれているあなた。
そんな小さな気遣いが嬉しい。
後は煮込むだけってまで来てコーヒーを入れた。
俺が飲みたくなったのと、ちょっと俺にも構って欲しいから。
コーヒーを入れたマグカップを持って、キャンバスから筆が離れたタイミングでコーヒーを目の前に差し出す。
「飲んでちょっと休憩しなよ」
「ん、そうする」
３度目の個展の時……適度な休憩を挟む方が捗る事に気付いたそうだ。
遅過ぎない？
とも思ったけど、それまで個展のために何点も描き下ろす事がなかったから気付かなかったそうだ。
そう自分のペースで書き溜めてたモノを出すスタイルだったから。
そのペースも仕事の合間、ノッちゃって寝不足で仕事なんて事も稀にあったけど。
３度目は期日の指定があった。
枚数の制限はなかったけど。
でも彼の中にあるヴィジョンが枚数を重ねさせた。
でも１枚の絵に納得するまで付き合うスタイルは変わらない。
『嘘みたいに絶好調』
そう言ったあなた。
だけどその何年か前にテレビでポツリと漏らした言葉。
『何年か描けてない……』
その言葉に衝撃を受けて……その言葉は俺の頭の片隅にずっと残っていた。
でも描けるようになって怒涛のように描いたよね。
日数以外なんの柵もないから？
あなたの表情は落ち着いてた……
ソファに移動したあなたにコーヒーを手渡す。
「どうぞ」
「ありがと」
受け取ってふうふう息を吹きかけ冷まして飲み出す。
１口飲んでカップをテーブルの上に置くと大きく伸びをした。
「疲れた？」
「肩と背中はね、ゴリゴリ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 206人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼羽(プロフ) - 青子さん» 初めまして＆コメントありがとうございます！…もう嬉しすぎます。青子さんのお話もお気に入り入れて何度も読み返させて頂いてます。そんな方からのコメント嬉しすぎます。拙いお話にお付き合いありがとうございます。しかもタニス・リーファンだなんて…頑張れます！ (2021年11月26日 22時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - 今回のラスト、まさかまさかでした。この先があったら、なかなか怖い事になりそう…などと妄想しております。蒼羽さんの作品をこれからも楽しみにしております。モンスターの太郎ちゃん、一郎君兄弟、楽しみにしております。最後にタニス・リーのファンです。 (2021年11月26日 16時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
青子(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます。蒼羽さんのお話は全部読ませていただいております。毎日の更新本当にありがとうございます。 (2021年11月26日 15時) (レス) id: d98076db62 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年11月26日 0時
