5話 イタズラ ページ6
まだ食べ切れていないご飯に箸を伸ばす。おばちゃんが作ってくれるご飯はどれも絶品だ。
まだ少し温かい味噌汁を口の中に流し込んだ。
「……っ………かっっらぁあああ」
静かな空間には迷惑すぎる大声を上げた。
ツーンとする辛さに涙が出る。これは…わさびの味。
私のご飯にこんな事をするのは、目の前で悪い顔で笑っているコイツ一人しかいないわけで。
恐らく……いや、確実にザキと喋っている間に入れやがった。
ザキが汗を流していた理由はこれかと勝手に納得する。
……じゃなくて。
「…お前………私の折角の朝ご飯に何してくれとんじゃああああああああ」
今日は一段と叫ぶ回数が多い気がする。
このクソガキは大人しくご飯も食べられないのだろうか……年齢は一つしか変わらないけれど。
「何ってわさびを入れただけですぜィ？」
「なんでよ」
「そりゃあ美味しくなるかなって思って」
「嘘つけや！楽しんでるだけだろ」
「人聞き悪いなァ。楽しくないって言ったら嘘だが美味しくなるかもって本気で思ったんでさァ」
「ああ、そう。てことは貴方はこれが美味しいとお思いで？」
席を立ち上がり、味噌汁の椀を持ったまま前にいる総悟の胸ぐらを掴む。
「じゃあさ、これ、飲めるよね？」
私は今、悪い顔をしている事だろう。
「そんな美味しいものをわざわざ横取りなんざ野暮な事はしねェから自分で飲んでくだせェ」
「いいよいいよ〜美味しいものは共有しないと〜」
そのまま顎を鷲掴み、無理矢理口を開けさせる。火傷するほどの熱さではないはずだ。
椀を傾けて総悟の口の中に味噌汁を流し込んだ。
「っ……………」
「私にいらん事したアンタが悪い」
総悟はその日の朝食を残した。
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作者名：冬織 | 作成日時：2018年1月27日 18時
