24話 いってらっしゃい ページ34
〜総悟side〜
ふらふらと不安定に歩くAが心配で、部屋の前まで来ていた。ゴソゴソと中から音が聞こえるから着替え中なのだろう。
ふと、考える。
アイツの身に一体何があったのか。
明らかにおかしい様子。声。
突然の休暇に隣町への用事。
頑なに何かを話そうとしない。
すぐに戻ってこれないような事件……なのだろうか？
障子が開いて私服姿のAが姿を現す。
俺を見て、一瞬驚いたように目を見開くとすぐに力なく笑った。
「びっくりした〜どうしたの？」
「…まぁ、ちょっとな」
今までに何度か見たことのある着物だった。黄色を基調とし、赤のさり気なく模様の入ったシンプルなものだ。
「お前、適当に着たろィ。崩れてらァ」
「あ、ありがと」
襟元を少し詰めて整え、帯の形も直してやる。
と、服の隙間に何か挟まっているものがあった。
「よし。やっぱり着物似合うな」
「何それ。どーせ私は寸胴だよ」
「そんな事言ってねェだろィ」
「ふんっ！どーだか！」
「そーいや、お前ランニングってどのコースで？」
「なんで？」
Aは唐突な質問に首を傾げる。
「俺もたまには走ろうかと」
「えー……何かやばいもん食べた？」
「食ってねぇよ。いいから教えろィ」
また遠くに行っちゃうじゃん、と悲しそうに笑うと素直に教えてくれた。
ルートを頭に入れながら、まだどこか覚束無い足取りを支えるように手を差し出し、門のところまで送ってやる。
門を出たところでAは一瞬躊躇う素振りを見せた。しかしすぐ何事もなかったかのように俺の手を離し歩きだそうとする。
「…………じゃあね」
「いってらっしゃい」
いつもと違う挨拶に少し不安を抱えた。
そして、離れていくAを見ながら言った。
「ザキ、アイツの跡をつけろ。絶対見つかるなよ」
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作者名：冬織 | 作成日時：2018年1月27日 18時
