23話 つかれる嘘 ページ33
〜総悟side〜
今にも倒れそうなAをしっかりと支えてやる。ほっとしたのか崩れかけた膝に腕を差し込み、抱えてやる。そのままとりあえず俺の部屋まで連れて行ってやった。
Aの体が、服の上からでもわかるほど熱い。
帰ってきたことを聞いて必死に探していた隊士たちは安堵し、様子を見ようと部屋までやってきたが体調が優れないようだと追い返した。
事実、熱でもあるかのような状態である。
近藤さんと土方さんが部屋に訪れ、Aと対面して座った。
「で、どこ行ってた?」
「トシ兄いきなりだな〜」
「ヘラヘラしてねェで答えろ」
「体力作りのランニングだよ」
Aの笑顔は崩れない。しかし、それはどこか無理している様にも見えた。
「始業時間までには帰ってこないと心配するだろーが」
「ごめんって!ちょっとさ、いつもと違うルート行ったら迷っちゃって」
「ったく……」
とにかく戻ってきてくれただけでいい、と近藤さんがAの頭を撫で、今日は休むように言った。
こいつは、絶対嘘をついている。どこかがおかしい。一人で背負って無理をするから、此方がどうにかしてやらなければならない。
…なんてこと、ここにいる全員がわかってんだろうけど
「あー…あのさ、ちょっと私しばらく出掛けなきゃ行けなくて。今日含めて3日くらい休み欲しいんだけど……」
「どっかってどこでィ」
「んー……と、隣町かな。もうちょい遠くかもしんないけど」
「こんなんじゃダメだろ」
「でも……行かなきゃ……」
そう言って無理やり立ち上がり、部屋を出ようとする。まだふらつく身体を咄嗟に支えた。
「ぅあっ……」
「え?」
少し上擦った声がAから漏れた。なんだ……これ?
「っ……ごめん!ほんと、大丈夫、だから、部屋行かせて。着替えたいの」
「あ、あぁ……わりぃ」
手を離すと、何とか扉までたどり着き、ヨタヨタと自分の部屋の方へ行ってしまった。
どうする。これはなんだ、何に巻き込まれている?
募るのは疑問ばかりで、なんてったって手掛かりが少なすぎた。
「近藤さん……あいつァ何か嘘をついてる。どうする?」
「……不本意だが、休みを与えよう」
「それじゃあ!」
「お前らの言いたいことはわかる。
Aちゃんには今言えない何かがある。でも言えないなら無理強いは出来ない。
だから今日中だ。今日中に決める。あの様子じゃあ先延ばしにしたらまずいかもしれん」
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作者名:冬織 | 作成日時:2018年1月27日 18時