22話 部屋 ページ32
〜総悟side〜
Aの部屋に入ると、山崎が言っていた通り綺麗でいつもと何ら変わらぬ状態だった。布団はきちんと畳まれ、部屋の端に寄せられている。
「隊服は着てないみたいだな」
土方さんの言葉に頷く。
やはりランニングか……箪笥の前に立って考えた。
少し前から早朝に出かけているのは知っていた。
Aが拳銃を使うきっかけになった一件から2日たった日だった。たまたま朝早くに目が覚めて、何となくぼーっとしていた時だ。廊下を歩く音が聞こえ出てみると、ジャージ姿のAがいた。挨拶をし、何しに行くのか聞いても答えてくれず、なんやかんやで真面目だから、どうせトレーニングでもするのだろうとあまり深入りはしなかった。
今思えばどこに行くのかくらいは聞いておいてもよかったのではと思われる。
ひと息ついて箪笥の持ち手に手を掛けた。
一応なりともアイツも女だから開けることは少し躊躇われるが、今はそんなことを言っている場合でもなさそうだ。
中を見ると不自然な隙間がそこから取り出された服があると物語っていた。
恐らくは予想が的中しているのだろう。
じっくりと調べ、ほかの棚も開ける。
特に手掛かりとなりそうなものはなく、出かけたことしかわからなかった。
もしかしたら少し遠出をして帰りが遅くなっているのではないか……
そんな考えも頭を過ぎる。
しかし、置き手紙や伝言もなしに遠出なんてアイツがするだろうか?前の時だって…………
結局出てくるものなんて何もなくて、ただ女の部屋を引っ掻き回しただけになった。
さすがに少しだけ申し訳ない気持ちに……共に部屋にいた土方さんがなっていた。
「やっぱり出かけただけなのか……?」
「……外探してきやす」
門に向かって足を進める。今回ばかりは土方さんも止めようとはしなかった。
徐々に歩く速さが速くなっていく。頭の中はどこを探すべきかでいっぱいだった。
「ただ……いま……」
「A!!!!」
門が開かれ、Aが少し覚束無い足取りで中に入ってくる。俺はそんなアイツの元に駆け寄っていった。
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作者名:冬織 | 作成日時:2018年1月27日 18時