14話 挟み撃ち ページ24
小さい頃からやんちゃな悪ガキどもと走り回っていたせいか、身体を動かすことには自信があった。
そんじょそこらの女とは比べ物にならないくらいだと自負している。
(あ、天人はノーカンで)
それでもやはり大人の男相手では見失わない様に追いかける事で精一杯だ。差はなかなか縮まらない。
男もこれでは埒が明かないと察したのか路地に入った。
「はぁ……はぁっ……ねぇっ…あんたはっ…そのまま、あいつを追いかけて…」
「お前は…」
「っ…回り込む!」
乱れる息でなんとか作戦を伝える。
男が入った路地は実質一本道で間違えて曲がればすぐに行き止まりが待っているのだ。どう転んでも捕まえられる。
総悟は真っ直ぐ男のあとを追い、私はひとつ手前の角を曲がった。奴がやってくるであろう方向へぐんぐん進む。
また角をひとつ曲がった時、前から走ってくる男の姿が見えた。
後ろから迫る総悟と正面で構える私で挟み撃ちにするという作戦。
捕まえられるようにと体術の構えの態勢を取った。
男は何を思ったのか、急に立ち止まった。チャンスだと私も走り出す。
すると、財布はがっちり左手に持ったまま家電用のガス管に反対の手を掛け、建物に固定してある細い部分を踏み場にして器用に登り出した。
「は!?反則だろ!!!」
「この管を斬っちまえば…」
「ダメだって!ここ民家!」
今にも刀を引き抜きそうな総悟をなんとか抑え、せめて財布だけでも…と頭を捻る。
あっと声を上げて、腰辺りでベルトに挟んだ拳銃の存在を思い出した。急いで取り出すとトリガーに指を掛け、左手で固定して照準を男の左手首に合わせる。
パンッ
「っ……!」
空気の破裂音がし、飛び出した弾は見事に命中した。男は顔を歪めて財布を落とす。それを拾い上げ、次は男を…と構えたが姿は見えず、瓦の上を走る乾いた音だけが微かに聞こえた。
「チッ…取り逃したじゃねェかィ。土方さんどやされやすぜ」
「副長のこれは取り返せたからいいでしょ。次見つけたらとっ捕まえてやる!あんたも武器を出さずに偉かったね」
えらいえらいと頭を撫でてやると、不本意そうに手を払い除けられた。
うん、流石に18にもなって年のそう変わらない女にされたくないわな。
捕まえられなくとも今日の報告はしっかりとしなければならない。次は失敗するもんかと意気込んで、屯所への道を歩き出した。
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作者名:冬織 | 作成日時:2018年1月27日 18時