(1) 山崎退の監察日記 ページ14
〜山崎side〜
〇月×日
ここ、真選組には有名で人気のカップルがいる。
…といっても別に付き合っているわけではない。ただお互い好き合っているのにも関わらず気付いてなくて、もどかしい両片想い。
つまりカップルだ。
え?付き合ってないからそう呼ばないって?
そんなの俺の知った事ではない。キャラ崩壊でも何でも言ってろ。俺は沖田隊長&Aさんカップルの応援団長だ。
今日もまた言い合いをしているとの情報が。
「テメェ…俺の飯に何しやがった」
「昨日のお返し。どうだった?お茶漬け風レモン汁ご飯は。改良に改良を重ねて作ったんだよ、あんたの為に」
ハートが付きそうな声音でAさんは話す。
中々過激なやり取りをしているが、これが俺たちの日常。そして沖田隊長を唯一出し抜けるのはAさんしかいない。
俺達からすると仲睦まじい。
真選組の全員が2人の恋心に気付いている。しかし応援する人ばかりではない。
直接アクションを起こす事はない(沖田隊長が怖すぎる)が、密かに想いを寄せる人はいる。
例えば…ほら、俺の隣。
「今日もAさんは可愛いな……」
「ああ……輝いてる」
これはやばい。
「ちょ、お前ら止めときなって。聞こえ…」
言い切る前にドンッと聞き慣れたバズーカの音が鳴り、黒煙を引いて鉄の塊がこちらに向かってくる。
見事に巻き添えを食らい、アフロになった。
「アンタ何やってんの!?危ないでしょ!」
「ゴキブリ退治でィ」
「は?まじ?でもこんなものを屯所内で打っ放さないの!わかった?」
「へいへい」
分かってないでしょ、と沖田隊長の頭を小突く。
Aさんは申し訳なさそうにこちらへ歩いてきた。
「ごめんね、うちの総悟があんな事して…よく言い聞かせとくから」
と小声で言う。にこりと笑顔を見せた。
こんな事をするからファンが増えるんですって…
正直沖田隊長を直視できない。
隣の2人は少し顔を赤らめていた。もしかしたら自分も同じような顔だったかもしれない。
「おいA、隊士誑かす前に飯片付けてこい」
「は?誑かしてなんかないし!」
そう言って離れていく。
残念な気持ちを抱えていると視界が翳る。
「おい、お前ら。もしAに手を出そうもんなら容赦しねェから覚悟しておけ」
それだけ言うとAさんに呼ばれて食堂を出ていった。
ドスの効いた声が耳に残る。
静かに2人を応援しようと心に誓った。
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作者名:冬織 | 作成日時:2018年1月27日 18時