第102話 ページ3
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翌日、イナズマジャパンのメンバーが朝食を済ませている間、一星とAは何やら怪しげな人物と会っていた。
「光の手術の日取りが決まったんですか!?」
驚いた声でそう言うのは一星充である。彼は、黒服を着た男が持つタブレットを見つめている。そして、そんな彼の隣では、蘇芳色の少女が穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「そうだ。アメリカの高名なドクターのスケジュールが、ようやく取れたのだよ。」
画面の中の怪しげな老人の言葉を聞いて、一星の顔が明るくなる。
「だったら光は…!」
「ああ、助かるだろう。この手術を受けられれば、だがな。」
含みのある言い方をする老人に、一星ははっとした表情をした。そんな彼の隣では、Aが相変わらずの笑みを称えている。しかし、後ろに組まれている彼女の手は、わなわなと震えていた。
「今回の機会を逃せば、次のチャンスは何年も先になるだろう。」
それを聞いた一星は、グッと拳を握りしめる。そして、絞り出す様な声で老人に問いかけた。
「俺は、何をすれば良いんですか。」
辛そうなその声を聞いて、蘇芳色の少女の顔が微かに歪む。老人への怒りか、青い少年のへの哀れみか、その表情は何とも複雑だった。
「君の使命はこれまでと同じだ。FFIアジア予選で日本代表を敗退させること。」
老人がそう言うと、黒服の男が一星に何かを差し出した。驚く一星の横で、Aの顔が一気に強張る。そんな彼女の顔を一瞥し、老人は更に続けた。
「君たちはこれまで失敗をし過ぎた。このままなら我々も君たちとの関係を見直さねばならん。」
赤いボタンの付いた、何かのスイッチの様な物を受け取った一星は、怪訝そうな顔をして老人に問いかける。
「何ですか、これは?」
それが何かを理解したAは、思わず1歩後ろへと退いた。その顔からは笑みが消え、もともと白い肌が更に白くなっていた。
「日本代表の移動バスのタイヤに細工をしてある。そのスイッチを押すと、仕掛けが作動する。」
それを聞いた一星は思わず目を見開いた。彼の頭の中に、恐ろしい光景が浮かび上がる。
「そこまで、するんですか?」
あり得ない、とでも言いたげな彼に、老人は容赦なく言葉を続けた。
「心配しなくても、死者が出る程の事故にはならないだろう。場合によっては、再起不能になる者も出てくるかもしれないがね。」
それを聞き言葉を失った一星を庇うかの様に、Aが1歩前へと進み出た。
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エル(プロフ) - かなりさん» かなりさん、初めまして。嬉しいお言葉ありがとうございます…!!頑張って完結させますのでこれからも宜しくお願いします。 (2020年5月23日 21時) (レス) id: 48e524db4d (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 私は、この小説が大好きです!!ずっとこの小説のコメントが書けなくてごめんなさい。でもこの小説はドキドキしながら読んでいます!これからもずっとこの小説を最後まで続けて欲しいです!!これからも体に気をつけて頑張って下さい!ずっと応援しています! (2020年5月23日 21時) (レス) id: d3ceb655af (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - かなえさん» ご感想ありがとうございます!返信遅れて申し訳ありません(/ _ ; )嬉しいお言葉を頂けてとても励みになります!今後も宜しくお願いします。 (2020年2月17日 18時) (レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» 名無しのりんごさん、ありがとうございます!返信遅れて申し訳ありません(/ _ ; )諸事情で更新頻度落ちてるんですけど、必ず完結させますんで今後も宜しくお願いします! (2020年2月17日 18時) (レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 私は、超語彙力がないんです!うらやましい!すごく面白かったです!シリアス展開で、ボケ要素少なめの真剣な感じで、なんかこう……ビリビリきました!ずっと応援しています! (2020年1月11日 21時) (レス) id: a03bb62dba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニーナ | 作成日時:2020年1月4日 18時