episode9 ページ9
「いえ、その…。むしろ気を遣って頂いて申し訳ないといいますか…。」
「え?」
「もっと頑張ります!先輩のお役に立てるようにちゃんと、か、彼女らしくなれるように!」
すると先輩はキョトンとした顔をして、突然大声で笑い出した。
「??え、えっと…?」
「っはは!あー、ゴメンゴメン。Aが可愛くてね。心配しなくても大丈夫。ちゃんと彼女だと思われてたと思うよ。」
「本当ですか?」
「うん。それより、肌寒くなってきたし、早く部屋に入りな。明日も任務でしょ?」
そう言って、繋いでた手が離される。
思わず、離れていく手を見つめてしまう。
「….はい。では、お疲れ様です。おやすみなさい。」
そう言って先輩に背を向け、アパートの門に手をかける。
「…A」
「え…」
突然腕を掴まれて、反射的に振り返ると額に柔らかい感触。
「……………。」
「オヤスミ。」
「…おやすみ…な、さい…」
ニコッと笑って夜の闇に紛れていく先輩の後ろ姿を見送って、自分の部屋の玄関に入る。
「っ!!///」
部屋に入った途端、思わず座り込んでしまった。
「え、さっきのって…え!?//」
おデコにキス、されたの??!//
まだ、柔らかな感触の残る額を押さえる。
まだ電気すら付けてない部屋は月明かりだけが差し込んでいて、静かで、自分の心臓の音だけが妙に響いて…。
「…どーしよ。どんどん先輩のこと、好きになる…。」
はぁ。
一つ、深呼吸をしてノロノロと立ち上がる。
カーテンを閉めようと窓に近寄り、外を見た。
「!…あれは、先輩が言ってた…」
アパートの前には、先輩のお見合い相手が雇った忍がいた。
「そっか…。そうだよね。」
先輩は近くに監視がいたのが分かってたんだ。
だから、私にあんなこと…。
分かっていたことなのに、改めて実感してしまうと毎回心が痛い。
「こんなんじゃ、ダメなのに…。」
少し乱暴にカーテンを閉めて、電気を付けた。
先輩の為に結った髪を解いて、熱めのシャワーを浴びる。
こんなことで毎回傷付いてたら、ダメだ。
先輩のことは好きだけど、これは任務なんだ。
任務に私情は挟んじゃいけない。
きっとさっきのことはお見合い相手に伝わるだろう。彼女がいるってわかれば、向こうも諦めて、先輩の監視もいなくなる…はず。
そしたらこの偽物の関係も終わって、今までの先輩と後輩の仲に戻るんだ。
それでいいんだ、…きっと。
その日はそのまま、髪もろくに乾かさずに眠ってしまった。
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ミコト(プロフ) - 終始ドキドキしてました。本当にこんな神話作ってくださってありがとうございます(*´ω`*) (2019年8月8日 16時) (レス) id: 47f303260b (このIDを非表示/違反報告)
紫(プロフ) - 棗さん» 嬉しいコメントありがとうございます!!楽しんで頂けて光栄です!とても励まされました。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 (2017年11月16日 21時) (レス) id: 224152640c (このIDを非表示/違反報告)
棗(プロフ) - コメント失礼します!余りカカシ寄りを読まないのですが気まぐれで読んでみたら凄い面白くって引き込まれました!最後の終わり方まで素晴らしくって感動しました!ありがとうございました (2017年11月16日 20時) (レス) id: 68edb9a409 (このIDを非表示/違反報告)
紫(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます!幼馴染、いいですね!参考にさせていただきます!リクエスト嬉しいです(^^) (2017年5月31日 0時) (レス) id: 99c982b07d (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - とても面白かったです。次もまたカカシ先生の幼馴染みたいな設定の作品リクエストしたいです! (2017年5月30日 22時) (レス) id: e67851a9a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫 | 作成日時:2016年6月10日 15時