エイジVer. ページ10
｢えいちゃん！こっち！！｣
大きく手を振って必死に俺を呼んでいる
そんなことしなくてもそのド派手な浴衣でひと目でわかるわ
｢遅いよー何分待ったと…｣
｢お前が早いんだろ｣
｢そんなケチ言わない！｣
｢ケチじゃな｢ケチ！行こう！｣｣
ほっぺを膨らませて手を引かれる
少し歩くと彼女が止まって
｢私トイレ行ってくる｣
｢1人で大丈夫か？｣
｢スマホあるし行ってくる｣
これ絶対危ないやつだよな
もうフラグビンビンだよな
とか思ったけどさすがにナンパなんてする奴はこの時代にはいないだろう
｢遅い｣
もう何分経ったことか
夏祭りとはいえ10分以上もかかるものだろうか
電話を掛けてみるが
案の定出ない
背伸びして周りを見渡すがそれっぽいのは見当たらない
どこだ…？連れ去られた？
自分の思考を過去最高に巡らせて
辺りを見渡す
｢え、えいちゃ｣
と一瞬足りとも聞き逃さなかった声は確かにAだった
｢見つけた｣
人が少ない木の下まで避難して彼女にハンカチを手渡す
｢なんで電話出なかったの？｣
｢いや、聞こえなくて、トイレ出たら、すごい人混みで、えいちゃん探したけど見当たらなくて、怖くて｣
息切れしていて、少し顔も赤い
俺も言えないか
｢馬鹿じゃないの、まじで｣
｢ごめん、ごめん、必死で｣
涙目になった上に、遂には泣いてしまった
｢…ほら、泣くなよ｣
｢怖かった…もう会えないかと思った｣
｢それは俺の方が思ってた、もう居なくならないで｣
なんて臭いセリフを吐いたのはこいつが初めてだ
あ、いけないいけない、
｢ごめん、…｣
｢じゃあもう始まるから、大丈夫？｣
｢うん、ごめんね、行こう｣
今思えばこんなにやばいと思ったのはさっきのエピソードが1番だと思う
｢はい、焼きそば｣
｢うわ！ありがとうー！うまいうまい｣
渡すや否や食べ始める
相当お腹が空いていたんだろう
｢汚ねぇ食べ方｣
｢屋台の焼きそばの美味しさ知らないでしょ｣
｢知ってる、あー｣
と口を開けると｢え？、キスじゃないよね、焼きそばか｣とかまたアホなこと言ってるけど
俺の口には焼きそばが詰められた
｢入れすぎ｣
｢ごめんて、あ、始まるよ！！｣
バァァァァアン
｢きれー！｣
きゃーきゃー言ってる彼女を静かに写真に撮る
｢えいちゃん！好きだよ！｣
｢なに、聞こえない｣
｢馬鹿野郎ー！｣
また来年も同じように過ごしたい
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作者名：しらごり | 作成日時：2019年1月30日 19時
