153 < Side S > ページ8
「今はただ熱病に侵されているだけだ」
そう言って父親が懲りずに再び見合い話を持って来たのは、それから少ししてからのことだ。
分相応の相手と結婚し所帯を持てば、今の自分がどれだけ愚かなのかが分かる。
それが父の言い分。
「前から好きな人がいると言ってるでしょう？
俺は見合いなんて絶対しません」
どんなに反論しても父は聞く耳持たずだった。
終いには母までもが「会ってみるだけでいいから」と言い出す始末。
そうして見合いの話は自分の意に反し、着々と進んでいった。
やっぱりこの家を出て行こう。
そう決めたのは見合いの前日だった。
ここにいても智くんへの想いは募るばかり。
会いたい気持ちはどんどん膨らんでいった。
智くんに会って誤解を解きたい。
そしてやり直したい。
もしかしたらまた突き放されるかもしれない。
そうなれば今度こそ立ち直れないかもしれない。
それでももう迷いはなかった。
俺は智くんに会いに行く。
二度とこの家には戻らない。
家を出る前にどうしても雅紀だけにはそのことを伝えたいと思った。
「俺、ここを出て行くよ」
雅紀は「本気なの？」と俺に尋ねた。
そうだと答えると、雅紀は寂しそうな顔をした。
その表情を見て胸がチクリと痛んだのは事実。
けれども俺の決心が鈍ることはなかった。
「もう二度と会うこともないだろうから、最後に言っておきたくて」
「・・・何を？」
「ありがとうって・・・」
雅紀は目を真っ赤にして首をブンブンと横に振った。
それが「礼には及ばないよ」という意味だったのか、「行かないで」という意味だったのか。
あるいは両方の意味だったのか・・・。
結局どっちだったんだろう？
俺は聞きそびれてしまった。
雅紀の部屋を後にし、俺はそのまま家を出ることにした。
両親と和也には何も告げずに。
このことを知れば三人は憤慨するだろう。
・・・いや、和也に至っては、やっと厄介者が出て行ってくれたと清々するかもしれない。
きっとそうだ。
家族の中でも特に和也とは昔から折り合いが悪かった。
目の敵にされているのは明らかで、俺自身もアイツだけはどうしても苦手だった。
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花咲*(プロフ) - なつさん^_^大好きなお話また、読み返して萌を頂いてます。このお話も大好き。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 7a9a23c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こんばんは！レスが遅くなってスミマセン！！しばらくツクを開いておりませんでした(-_-;)ゴメンナサイ。さてさて。なんとか完結しましたが、最後はあの方たちも再登場でドタバタでした（笑）楽しんでもらえたのなら良かった♪最後までありがとう！ (2020年3月8日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - なつさん、完結＆後日談、ありがとうございます。レジェンド御一行に再開できてお礼も伝えられて良かった良かった。リアルの雑音（？）もある中ですが、なつさんの描く物語には癒やしと楽しさがまさに泉の如く溢れていますね。でもなつさん、無理はしないでくださいね。 (2020年2月27日 13時) (レス) id: 4ac657099e (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - じゅーくろーさん» じゅーくろーさん、こんばんは！こちらこそ最後までお付き合いありがとうございました！潤くんには少しかわいそうな展開でしたが、今は心から二人を祝福してくれているでしょう。やっぱり山はハッピーエンドじゃないと！！ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 葉子さん» 葉子さん、こんばんは！やっとやっと完結！最後までお付き合いありがとうございました♪なんとかハッピーエンド。山はやっぱりこうでなくちゃ！！過去作品も読んで下さってありがとうございます。今度感想教えて下さいね☆ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年11月14日 0時
