154 < Side S > ページ9
家族に気付かれないよう、コッソリと玄関へ行った。
スニーカーの靴ひもを結んでいると、突然ドアが開いた。
「何してんだよ、こんな夜中によ」
タイミング悪く外から帰って来たのは和也だった。
「俺は出て行く」
「はあ？」
「もうこの家には戻らない」
「明日は見合いだろうが」
「見合いするなんて俺は一言も言った覚えはないよ」
「はっ、悲劇の主人公気取りかよ」
和也はバカにしたように笑った。
バカにしたけりゃ好きにすればいい。
どのみち、和也とももう会うことはないのだから。
「後のことは頼んだよ」
それだけを言い残してすれ違う時、和也は俺を見ようとせず言った。
「アンタに言われなくたって、店は俺がなんとかするさ。
あー、これでやっと清々する！
二度と戻ってくんな」
そして和也はスタスタと家の中に入って行った。
すっかり遅くなってしまった。
智くんはもう寝ているだろうか・・・。
最終電車には乗り遅れた。
仕方がないので、タクシーを捕まえようと国道をトボトボと歩いた。
しかしこんな時に限ってタクシーは見つからない。
「疲れた・・・」
昼間の暑さが残る大通り。
額や首から滝のように汗が流れた。
しかも喉はカラカラ。
少し休憩しようと、自販機の前で立ち止まった。
その時、俺はようやく自分の失態に気付く。
なんとスマホも財布も実家に忘れてきてしまったのだ。
「マジか・・・」
バカか、俺は。
いくら智くんに会いたい一心だったとは言え、何も持たずに家を飛び出すなんて・・・。
『翔くんってさ、しっかりしてそうなのに意外と抜けてるんだよなあ』
彼にはよくそう言われた。
実際、長男ということもあってしっかり者に見られることは子どもの頃から多かった。
でも実際の俺はこのザマだ・・・。
「あぁ〜・・・」
きっと和也の言う通り、俺は悲劇の主人公に浸っていたのだろう。
だがしかし、スマホも財布もないんじゃ話にならない。
俺はガックリ肩を落とし、踵を返す。
二度と戻らないと啖呵を切った直後に実家に戻ってる自分を情けなく思う。
こんなことろ弟たちに見つかったら、めちゃくちゃカッコ悪い・・・。
しかももう体力も限界だ・・・。
俺はフラフラになりながらも点滅信号を確認して国道を横切る。
その時だった。
猛スピードで走ってきた車がけたたましいクラクションと共に俺に接近してきたのは。
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花咲*(プロフ) - なつさん^_^大好きなお話また、読み返して萌を頂いてます。このお話も大好き。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 7a9a23c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こんばんは！レスが遅くなってスミマセン！！しばらくツクを開いておりませんでした(-_-;)ゴメンナサイ。さてさて。なんとか完結しましたが、最後はあの方たちも再登場でドタバタでした（笑）楽しんでもらえたのなら良かった♪最後までありがとう！ (2020年3月8日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - なつさん、完結＆後日談、ありがとうございます。レジェンド御一行に再開できてお礼も伝えられて良かった良かった。リアルの雑音（？）もある中ですが、なつさんの描く物語には癒やしと楽しさがまさに泉の如く溢れていますね。でもなつさん、無理はしないでくださいね。 (2020年2月27日 13時) (レス) id: 4ac657099e (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - じゅーくろーさん» じゅーくろーさん、こんばんは！こちらこそ最後までお付き合いありがとうございました！潤くんには少しかわいそうな展開でしたが、今は心から二人を祝福してくれているでしょう。やっぱり山はハッピーエンドじゃないと！！ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 葉子さん» 葉子さん、こんばんは！やっとやっと完結！最後までお付き合いありがとうございました♪なんとかハッピーエンド。山はやっぱりこうでなくちゃ！！過去作品も読んで下さってありがとうございます。今度感想教えて下さいね☆ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年11月14日 0時
