all for “YOU” 〜君の罪、僕の嘘〜 2 【山】

77 ページ30

「え？何？」

笑いを堪えながら智くんを見ていた俺に気付いて、彼はキョトンとしている。

「いや、猫みたいだなあと思って」

「猫？」

「ううん、なんでもないよ」


自由気ままのように見えて・・・実はすごく繊細で傷つきやすい猫ってとこかな。


智くんは何がなんだかサッパリといった表情で俺を見ていた。




その後、智くんに勧められるがままシャワーを浴びた。


「あー・・・気持ちわりぃ・・・」


正月早々この有様とは。
今さらながら後悔。

この前、ここに来た時も確か二日酔いになってたような・・・。
結構やらかしてるな、俺。

それでも熱いお湯を頭から浴びると気怠い体がほんの少しシャキッとしたような気がした。



濡れた髪をドライヤーで乾かして脱衣所から出ると、智くんがダウンコートを着て出かけようとしていた。


「どこか行くの？」

「ちょっとコンビニにね。
お茶がなくなっちゃったし、他にも買いたいもんあるし。
すぐ戻るから」

「じゃあ俺も行く」

「えー、翔くん気持ち悪いなら寝てていいよ？」

「ううん、行く！」

智くんはそれ以上何を言っても聞かないだろう俺に苦笑しながら頷いた。




「改めまして、明けましておめでとうございます」


元旦の朝。
いつもはたくさんの人が行きかう賑やかな商店街も今日ばかりは閑散としていた。
隣を歩く智くんは寒そうに背中を丸め、両手をポケットに突っ込んでいる。

やっぱり猫みたいだなと思った。


「うん、改めまして明けましておめでとう」

「こんな元旦の朝から二日酔いなんて最悪だぁ・・・」

「まだ頭痛い？途中で薬買おうか？ここの通りに年中無休の薬局があったと思うから」

「大丈夫。薬の力は借りない。自然治癒力でなんとかする」

「将来、医者になろうって人がよく言うよ」

「それもそうなんだけどね」

「家で寝てればいいのに」

「ヤダ」

「どうして？」

「寝正月なんてなんかもったいないじゃん」

「まあ、そうだね」


そんな話をしながら歩いていると、ふと明け方見た夢を思い出した。

78→←76

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す