all for “YOU” 〜君の罪、僕の嘘〜 2 【山】

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「そう言えば、智くんは正月は信州の実家に帰るの？」


二人でたわいもない話をして、もうすぐ正月だねという会話の流れから、智くんに聞いてみた。


「俺は帰らないよ。
毎年、春に少し長めの休みをもらって帰ってるから」

「そうなんだ。
じゃあ何して過ごしてんの？」

「毎年、高校の同級生が遊びに来たりするんだけどねえ・・・。
みんな彼女が出来ちゃってさ、友だちの俺なんて後回しだよ。
だから今度の正月は寝正月の予定」


とすると、智くんに彼女がいないのは確定だな。

って言うか単刀直入に本人に聞けばいいだけの話なのに、なぜかどうしても聞けない俺。
思わず「お前は女子か！」と自分自身にツッコみたくなった。


「翔くんは？山風村に帰るんだろ？」

「俺も帰らないよ。
もう何年も実家には帰ってないよ。
帰りたいとも思わないしね」

「そっか・・・」


智くんは俺が昔から家族と不仲なのを知っている。
子どもの頃、よく祖父や両親のことを彼に愚痴っていたのを思い出した。


「じゃあ、大晦日からうちに来る？一緒に年越ししようか？」

突然、智くんがそんなことを言い出した。

「えーーーーーっ！

マジでいいの！？泊まってっても」

「そんなに驚かなくても・・・。
もちろん翔くんに何も予定がなければの話だけど」

「行く行く！絶対行く！！
是が非でも行かせてください！！！」


前のめりで声を張り上げる俺にすっかり圧倒されている智くん。
「じゃ、じゃあ、是非来てね・・・」と若干引き気味だったのはこの際、見なかったことにしよう。



実のところ予定はあった。
毎年、カウントダウンに行ってバカ騒ぎするのが恒例で、今年も村上たち仲間と集まるつもりにしていたんだけど・・・。

今回はパス！
誰が何と言おうと絶対パス！！




ああ、今日は勇気を振り絞ってここへ来て良かった！
こんなに年末年始が楽しみなことってなかなかないぞ？

村上たちにはそのうち缶コーヒーでも奢ってやれば大丈夫だろう。



なんともゲンキンな俺なのであった。

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