all for “YOU” 〜君の罪、僕の嘘〜 2 【山】

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翌日、午後十一時。

俺は智くんのバーの前に来ていた。
昨日会ったばかりだから、と踏ん切りがつかず躊躇していたら気付けばこんな時間。
そして散々迷った挙句、結局またここに足を運んでいる自分が滑稽に思えた。

きっと智くんだって『また来たのか？』って呆れるだろう。



『BAR Blue Storm』

壁面に取り付けられた黒いアイアンクラフトのサインの前で、なおも俺は入るべきか入らざるべきかウロウロしていた。
通りすがる忘年会帰りの酔っ払ったサラリーマンたちがこちらをジロジロ見ている。


そんなよもや不審者であろう自分が居た堪れなくなって、無意識のうちに店に足を踏み入れていた。




「いらっしゃいませ」

カウンターの向こうから聞こえた声。

「こんばんは〜・・・」

「翔くん！来てくれたの？」

なんとなく智くんの声が弾んでいるように聞こえた。

「うん。また来た」

「俺、待ってたよ！ほら座って座って」

智くんに勧めらるまま、カウンター席の一番隅に座った。




「今日は何にする？」

「うーん、この前の反省を踏まえて今日は軽いのにしようかな・・・。
じゃあ・・・ジントニックで」

「翔くん、ジンベースが好きなんだね？了解」


今日は時間も時間なので客足はまばら。
智くんと話したかった俺にはそれが返って好都合だった。



「今日は飲み過ぎるなよ」

そう言って差し出されたジントニック。

智くんにたしなめられて思わず「分かってるよ！」とぶっきら棒に答えた。
そんな俺を見て彼は笑いを堪え切れずクスクス笑っている。
それに釣られて俺もついつい吹き出してしまった。



「智くんもお酒、飲むの？」

「俺はほとんど飲まないよ。
仕事で試飲する時くらいかな？」

「そうか・・・」


バーで働いているし試飲もするということは酒自体は嫌いではないのだろう。

いつか東山先生が講義で言っていた精神疾患とアルコールの関係。
きっと智くんはそれを理解した上で飲まないんじゃないのかなと思った。

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