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結局俺は弁明の一つも出来ず……というか、しなかった。しようとも思えなかったのである。
何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。だからこそ、これ以上醜態を彼女に晒したくなかったのだ。
Aは神威の家に泊まるつもりだったらしく、俺は一人家路を歩く。もう直ぐ訪れる冬が、余計に俺を凍えさせた。
ピッタリと横を歩いて、「寒いですね」と俺に微笑みかけるA。
……そうやって俺たちは過ごして来たはずなのだが、今回のことで、何処かから崩れ始めてきている気がするのだ。
今度会ったら謝ろう。そんな簡単に思えても、いざ彼女を目の前にすると、俺は何も言えなくなる。
付き合いたての頃は割と簡単に伝えられた「好き」という感情が、同じ時を重ねる度に言わなくてもいい、という風に思えてきてしまった。
言わなくても伝わる。どうせ同じ気持ちだろう。……そうやって、バカみたいな安心感を持っていたから、結果的に傷つけたのだ。
それに俺は、そもそもAに対して「ごめん」と素直に謝ったことがあるのだろうか。
記憶にないのだ。軽い口喧嘩はしても、亀裂の入るような大きな喧嘩はしたことがない。だから俺は、彼女への謝り方が分からないのである。
ふと見れば、歩いていく道にいくつもの店が立ち並んでいた。
Aの好きな甘いケーキが売ってる店、キラキラした宝石が売ってる店、綺麗な花が売ってる店……どこで何を贖罪として買ってあげれば、彼女は許してくれる。
しかし、俺の足が止まったのは、そのどれでもなく、出店みたいな、外に建てられている小さな店の前だ。
俺はそこで風が吹くと揺れるようなピアスを手に取る。指で触れば、ヒラヒラと揺れ、これを付けている彼女の顔が思い浮かぶ。
店員に託し、ラッピングするかと聞かれたが、自分で彼女の耳に付けて渡したいため、要らないと首を横に振った。
俺のポケットの中で揺れるピアスを、彼女は気に入ってくれるだろうか。
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美空 - 完結おめでとうございます!とても素敵な作品でした!これからも楽しみにしてます! (2017年8月29日 2時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ジュリさん» 最高ですか!! ありがとうございます! とっても嬉しいです! あんまりイチャコラを書かなかった作品ですが、ジュリさんがそう言ってくださったのなら良いです! 閲覧とコメントありがとうございました (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます! 淡々とした夏休みの小さな暇潰しにでもなってくださったら嬉しいです( ´ ∀`) 新作の沖田は甘々ですが、こちらでは書かなかった甘い沖田を書いているので閲覧よろしくお願いします!! (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - あぁ最高です! (2017年8月18日 13時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 凄く良かったです!夢中で読みました!新作も読ませていただきます!!! (2017年8月17日 23時) (レス) id: 12c1829223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月25日 11時