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辿り着いた映画館。自動ドアを無理やり潜り抜けて辺りを見回すも、彼女の姿が見当たらない。
時計を見れば、約束の一時間まで数分残っていた。
此処じゃなかったのか、そう落胆するも、俺の前に見慣れたパンプスが映り込む。俯いていた顔を上げると、そこには飲み物を持ったAが立っていた。
『はい、どうぞ』
そう言って持っていた飲み物の片方を俺に差し出し、先を歩いていく。それに続けば、丁度映画の予告が始まる。
まだ少しだけ暗いシアター。Aの顔を盗み見るが、彼女の考えていることが何ひとつ読めない。
『……懐かしいですね』
ボソリと零した言葉は、俺の胸に深く染み込んでくる。始まったのは少女漫画の実写化映画であり、本当にAはきっと、あの時に戻ろうとしているのかもしれなかった。
それなら俺は、答えてやるべきなのだろう。だがしかし、ただ答えるだけでは結局変わらない。
彼女が選んだ映画の結末は、あの時と同じでハッピーエンド。今話題の若手のヒーローとヒロインが主演だが、彼女の好きな高杉晋助は出ていないみたいだ。
映画も終わり、辺りが明るくなっては皆出口へゾロゾロと歩いていく。俺たちもそれに続き、外に出るが、俺はその足を止めた。
Aはゆっくりと振り向いて、俺の正面に向かい合う。
『映画を見ながら……ずっと、考えてた』
何をですか、と聞きたげに小首を傾げた。
そんな彼女と一歩、俺は距離を縮める。
『これから先、』
『俺、もう何も要らねェや』
『……お前だけ傍に居てくれれば、もう何も要らねェ』
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美空 - 完結おめでとうございます!とても素敵な作品でした!これからも楽しみにしてます! (2017年8月29日 2時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ジュリさん» 最高ですか!! ありがとうございます! とっても嬉しいです! あんまりイチャコラを書かなかった作品ですが、ジュリさんがそう言ってくださったのなら良いです! 閲覧とコメントありがとうございました (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます! 淡々とした夏休みの小さな暇潰しにでもなってくださったら嬉しいです( ´ ∀`) 新作の沖田は甘々ですが、こちらでは書かなかった甘い沖田を書いているので閲覧よろしくお願いします!! (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - あぁ最高です! (2017年8月18日 13時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 凄く良かったです!夢中で読みました!新作も読ませていただきます!!! (2017年8月17日 23時) (レス) id: 12c1829223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月25日 11時