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走って走って走って、私は何処へ向かっているのだろうか。でも止まるわけにもいかず、そのまま走り続ける。
しかし途中の段差でつまづき、転んでしまった。
ジンジンと痛み始める膝と手のひら。涙が地面に零れ落ちそうになるその時、私に手を差し伸べてくれる人がいる。
彼の差し出す手に恐る恐る自分のを重ねれば、起き上がらせてくれた。黒いエプロンを身につけ、丸い眼鏡をかけるこの男性は柔らかい笑みを浮かべ、「大丈夫ですか?」と小首を傾げて私に聞く。
『はい……ありがとうございます』
「それは良かった」と言ってくれるこの人は、恐らくこの近くある出店の店員なのだろう。
彼の並べている商品に目をやると、そこには先ほど総悟さんの部屋で見たピアスが売られていた。
……そうか、彼はここで買ったのか。
そんな恨めしそうに見ている私の視線に気付いたのか、店員さんは「これ」とピアスを手に取る。
『昨日イケメンのお客さんが買ってくれたんですけどね、自分でつけてあげたいからって贈り物なのにラッピングをしなかったんですよ』
「やることまでカッコいいですよね」と彼は笑った。……きっと、そのお客さんとは総悟さんのことなのだろう。
そんなに彼女が好きなのか。やっぱり私はもう要らないんだ、そんな事実ばかりが胸の底から浮かび上がる。
私の耳に開いているピアス穴が、今更になって痛み始めた。キリキリと、ピリピリと、私を蝕んでいく。
あの時囁いてくれた言葉は、もう嘘に変わってしまったのだった。
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美空 - 完結おめでとうございます!とても素敵な作品でした!これからも楽しみにしてます! (2017年8月29日 2時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ジュリさん» 最高ですか!! ありがとうございます! とっても嬉しいです! あんまりイチャコラを書かなかった作品ですが、ジュリさんがそう言ってくださったのなら良いです! 閲覧とコメントありがとうございました (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます! 淡々とした夏休みの小さな暇潰しにでもなってくださったら嬉しいです( ´ ∀`) 新作の沖田は甘々ですが、こちらでは書かなかった甘い沖田を書いているので閲覧よろしくお願いします!! (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - あぁ最高です! (2017年8月18日 13時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 凄く良かったです!夢中で読みました!新作も読ませていただきます!!! (2017年8月17日 23時) (レス) id: 12c1829223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月25日 11時