兄貴のお気に入りに恋をした【灰谷竜胆】 (ページ21)

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(頼れる兄貴がいてこそ、か)

｢佐野真一郎の死がイザナを“ああ”させたのはわかった｣
｢…｣
｢でもよ、佐野万次郎の兄貴だろ、イザナも。
なんでまたそこで兄弟喧嘩すんだよ｣

兄貴が死んで気が狂った、のはまだ納得がいく。
なんで今度は弟とやり合うことに繋がるんだよ。

｢俺にもそこは話してくれねぇから分からねぇ｣
｢はぁ？お前抗争の理由が分からなくて相手とモメんの？｣
｢言ったろ、あいつの夢に俺はついて行くだけだ｣
｢…危なっかしいから？｣
｢はは、そうだな！ほっとけねぇからな｣

(絶対的存在のイザナを弱いだの、
ほっとけないだのと言う鶴蝶の方が兄貴みたいだ)

｢お前ら、やっぱ変わってんな｣
｢好きに言えよ｣

もう日の出を迎えそうな夜空を見上げながら
つい、自分だったら…と考えてしまう。

俺は4兄弟じゃねーけど、もし兄貴がいなくなったらって。

…友を、そして兄弟である弟を許すことができンのかな。

答えは見つからない。ただの想像だ。

イザナと鶴蝶の関係も思ったより人間臭くて安堵した。

圧倒的な力に屈してチームに入ったところもあったが

(俺らがついて行くのがこの2人なら)

それでも良いか、と思えたし、

｢仕方ねぇから、お前らの夢に加担してやるよ｣

柄にもなく2人の力になりたいと思ってしまった。

｢お前が八戒で、蘭が悟浄な｣
｢は？｣

ニシシっと、まだあどけない顔で笑う鶴蝶を見てると
(そうか、こいつ年下なんだった)
阿呆な兄弟(弟)が増えたと思わずにはいられない。