ひらり、言の葉。

きみだけの定位置。2 ページ37

「相葉くん、お疲れ様です！
さっきは絡んでくれてありがとうございましたっ！」

「相葉くん、お疲れ様ですー！
ご飯連れてってくださいよー！」


ざわざわと。
先ほど共演した後輩グループ数人が入ってきた。

俺に気づいて頭をさげる奴もいるけれど、気づけばソファに隠れてしまうように仰向けに寝そべっていたニノには誰も気づかない。
ニノも気分じゃないのか…そりゃそうだ。気分じゃないだろう。
だから、わざわざ自分の存在を伝えようともしてない。むしろ、気配を消してるような。


「あー、もー、うるせぇなぁ！
どうせ、おごってもらおうっていう魂胆だろー？
楽屋にくるの、伊野尾だけじゃなかったのかよー」


もともと、人に優しくて、面倒見がとても良い兄貴気質の雅紀。
わらわらとそばに来る後輩に、言い方は雑でも嬉しそうに可愛がるようにしてる。

もそ、とニノがソファの背に向かうように体勢を変えて、俺のお腹に顔をくっつけてきた。


…この状況、ニノの首をしめてるような気がして…。


連れて帰るか。そう判断を下した、その時。


「あれ？二宮くん？
二宮くんもいたんですね！
お疲れ様です！」


ぱたぱた、と、大きな体の割に飼い主を見つけた犬のように、中島が駆け寄ってきた。

きっと、ドラマで共演してるから、そういう意味でも懐いてるんだろうな。なんて思いつつ、俺は中島の前で手を振った。


「？」

「わり。今ニノ、腹いてぇみたいなんだよね。
ちょっと、このまま連れて帰るわ」

「え、そうなんですか？二宮くん、お疲れ様でした。お大事に！」


ぺこり、見てないニノに対してもお辞儀をしてメンバーの輪に戻る姿を見送り。


「ごめん、ちょっと。」


雅紀の声が聞こえたかと思ったら、左肩に叩かれる感覚。


「翔ちゃん。ありがと。」

「ん？おお。いいの？」

「当たり前。こっちのほうが、大事。」


後輩たちに聞こえない大きさで、はっきり言い切った雅紀。
ニノにはしっかり聞こえたようで、ぴくりと反応した。

お腹に感じていたニノの体温がなくなったのを確認して、立ち上がる。
荷物を持って、扉に向かう途中。


「ほらほら、帰った帰った。
相葉くん、このあと用事で来たから、ご飯は自分たちで行きなさい。」


言うと、察した後輩たちがついて楽屋をでてきた。
閉める扉の向こうに、雅紀のお腹あたりにくっつくニノがみえて、そっと息をついた。


多分もう、大丈夫だろ。

きみだけの定位置。3→←きみだけの定位置。1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す