第52話:その息子 1 ページ3
〈side ジョルノ〉
『はい、どうぞ。』
目の前の大人の女性…悠さんは、ひざをかがめてぼくに氷菓子を手渡してくれた。
お礼を言ってそれを受け取れば、彼女はニコニコしながら『はーい』と答えてくれる。
ジョル「…悠さんは、どうしてマスクをつけてるんです?」
『えー、そうだなぁ。五年前にある人たちと旅をしてたんだけどね?その人たちが皆…その……顔面偏差値が高くて…。』
なるほど。一緒にいるのが気が引けたってわけか。
けど、どうもそれだけじゃなさそうだ。
ぼくが思うに、この人は自分に自信がないんだろう。だって、今もずっと遠くを見ている。
『食べながら聞いてくれる?』
話を切り出した悠さんが手帳を取り出す。やっぱり仕事で僕に会いに来てくれたのか。
ぼくなんかに関わる仕事って、なんなんだろう。
『ジョルノくんのお父さんは、お母さんの再婚相手なんだよね。今から聞きたいのはその人のことじゃないの。』
…お父さんか。ぼくは義父のことが好きでない。
けどまあ、最近は手のひらを返したように暴力は振るわなくなった。だからと言って好きじゃあないけど。
全ての始まりは、一年前にあのギャングの男を助けた日からだ。
『あなたの本当の父親を、私は知ってる。』
ジェラートをなめるのを止めた。
…「本当の父親」、実はぼくはその人の写真を持っている。
再婚してもなおその男のことを忘れられないのか、母さんがそいつの写真を持っていたからだ。
『その人の名前はDIO。ディオ・ブランドー。
金髪の映える綺麗なひと。人を統べる高貴なカリスマ性をもつ男……。
そして、私達の前に立ちはだかる完全な悪だった。』
公園のベンチで隣に座っている悠さんは遠くを見ている。女性らしい柔らかな視線は、いつのまにか厳しいものに変わっていた。
まるで、辛いことでも思い出すかのように。
『私は仲間を傷つけられたし、洗脳もされた。旅に同行していた友達は、本当につい最近動けるようになったばかり。
あのひとは死してなお、たくさんの人の心に傷痕を残した。私も含めてね。
…だから、その被害者達を助けるのが私の仕事。』
ジョル「……。」
『ジョルノくん、君もその一人だよ。』
ぼくが、本当の父親の被害者だって?
話を聞く限り、彼女はDIOという男の息子であるぼくに対して恨みでもあるのかと思ったんだけど。
『実の父親からの愛を与えられない孤独な子どもを、DIOは…あのひとは生み出してしまった。
それだけは、どうしても許せることじゃないの。』
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キョウべえ(プロフ) - ピーカンパイさん» うるさくなんかないですよーっ、いつも嬉しいです!原作の花京院への罪悪感と共に書きました。すまない……。いつもありがとうございます! (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - 姉御さんさん» いつもありがとうございます!嬉しいこと言ってくれちゃって〜!です!暗チ…もっと登場させたいです…。ギアッチョの出番なんて無理矢理ねじ込みました笑 (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - ゆゆさん» いつもありがとうございます!どうか幼い時の彼にも幸せに生きていてほしいという欲望の賜物であります……! (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - Toyさん» いつもありがとうございます!暗チは…本当に素晴らしいですよね……!梅雨明けで毎日暑いですけど、お互いに生き延びましょう…。 (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
ピーカンパイ(プロフ) - 今現在私は絶滅危惧種になりそうです(?) (2020年8月11日 1時) (レス) id: e408f95724 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キョウべえ | 作成日時:2020年8月8日 6時