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Aは炭治郎に手を掴まれながら再びソファーに腰をかけた。


そしてふと、今日学校で同級生に言われた言葉を思い出した。


「二人ってあんまり似てないよね」


悪気なくそう言ったクラスメイトのあの笑顔が憎たらしい。

似ていないに決まってる。だって私達は本来ならば双子として、兄妹として、生まれてくるはずじゃなかったのだから。

双子だけれど似ていない。いや、Aが似ていないのは兄の炭治郎とだけではない。
下の兄弟達。それから父と母。Aは家族の誰とも似ていなかった。

その事実は誰よりも彼女が一番よく理解していた。


ふぅー、と一度だけ深いため息をつく。


こういう人生を歩んでいると、時々何もかもが嫌になる。
知っていることを知らないと言って、覚えていることを覚えていないと言って、忘れていないことを忘れたと言う。
そんなくだらないことばかり。


それでも彼女がこうして笑顔で生きていけるのは全て炭治郎のおかげだった。

炭治郎が笑えば自分も笑える。炭治郎が喜べば自分も喜べる。大好きな炭治郎が隣にいてくれるから、今こうして自分は精神を保っていられる。

望んだ形では幸せになれないだろう。それでも彼の隣で生き続けることができればなんでもいいんだ。


Aは眠る炭治郎に向かって微笑みながら呟いた。


「おやすみ。炭治郎」

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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時

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