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長かった昼休みもとうとう残り十分ほどになった。
Aは弁当箱を片付けながら最後に三人に向かって、博物館に行く日の日程を確認をする。
「再来週の12日、10時に駅前へ集合ってことでいいよね? それで、そのままバスに乗って博物館に行く!」
その言葉に炭治郎と善逸は異論がないといった様子で首を頷かせた。
伊之助は机の上で組んだ腕に顔をのせて眠そうにしていた。まあおそらく話は聞いているから大丈夫だろう。
「それにしても、みんなで出かけるの楽しみだね!」
しばらく先の予定ではあるものの、炭治郎とAはもうすでにうきうきとした声色でその胸を躍らせていた。
「ああ。……そういえばみんなでどこかに遊びに行くのって初めてじゃないか?」
「あっ、確かに!」
二人はほのぼのオーラをさらけ出しながら、話に花を咲かせていく。しかし炭治郎とAが楽し気に会話をしている中、唯一善逸だけがどこか不安げに目を伏せていた。
先程までは普段通りだったはずの彼が急に黙り込んでしまっているのに気付いた二人は、心配の言葉を善逸にかける。
「善逸、顔色が悪いぞ? どうかしたのか?」
「口内炎でもできた?」
二人の言葉に、善逸は重々しくその口を開いた。
「――……俺さ、みんなと遊ぶの楽しみなんだけどさ……。気づいたんだよ……」
彼の顔へ静かに、ゆっくりと、陰が落ちていく。
炭治郎とAは不思議そうに互いの目を見つめ合った。
「とんでもないことに気づいちゃったんだ……」
一体、何が。
二人は善逸のその物々しい雰囲気に思わず心臓を早まらせる。そして緊張により口の中に溜まった唾をゴクリと飲み込みながら、善逸の次の言葉を待った。
善逸が、ゆっくりと口を開く。
「――……来週、三者面談があるっ……!」
……。
世界の終わりでも知ってしまったかのような反応をしていたためよほどのことがあったのだろうと心配したが、案外平和的な悩みだったようだ。
二人は気の抜けた様子で肩の力を抜いた。
そして炭治郎は安心したように笑いながら言った。
「そういえば来週だったな。三者面談」
「やばいよ俺……。絶対担任に色々言われるよ……。またじいちゃんに怒られる……」
善逸は絶望にまみれた表情でぶつぶつと呟く。
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時