第117話 ニンゲン ページ36
デイビッドside
「そんな……」
風を切って走るアンダインの肩の上で体を揺さぶられながら、ボクは二人から告げられた内容に言葉を失った。
フラウィは、初めから地下世界の解放を願ってなどいなかった。本当の狙いは、城に保管されたニンゲンのソウルを取り込み、世界を操る力を手にするためだったのだ、と。
とても信じられず、ボクは頭を強く振った。
「そんな筈は……彼は、確かにボクに協力すると言ったんだ……!」
「現実を見ろ!本当に協力し合っているというのなら、相手を置いていく筈がないだろう!……そもそも、あいつはお前に一言でも“地下世界を解放したい”と言ったのか?」
「!そ、れは……」
懸命に記憶の糸を手繰る内に、ボクは気が付いた。
彼は、確かに“協力する”とは言った。しかし、彼自身がどうしたいのかということは一切語ってこなかった。むしろ彼は、ほとんどボクに選択を委ねていた。ボクの提案を受けて、ボクが欲しいと言った情報を、くれていただけだった。
ボクが一方的に、一緒に同じ未来を見つめていると……思い込んでいただけだったのだ。
「ハァ……お前、まんまと奴に利用されたな。計画を邪魔させないためという体で、アズゴアを気絶させたのも、おそらくはソウルの周りを手薄にするためだ!」
「……ッ」
悔しい。
彼の裏切りよりも、彼の真意に気付くことができず、彼の手の上で動かされていた自分自身の愚かさが、悔しくて堪らない。
しかしそれでも、まだ解せないことがあった。
「……あのニンゲンは、このことを全てわかっていたというのか?それに、君はニンゲンを敵だとみなしていた筈だ!それなのに、あのニンゲンの言うことを、信じるっていうのか?」
「ああ、その通りだ!」
「!」
あまりにも迷いなくそう言い切る彼女に、ボクはたじろいでしまう。
「……あいつは、お人好しが過ぎるニンゲンだ。フリスクもそうだが、命を狙われたにも関わらず、二人は私たちに敵意を向けないどころか……この世界の為にできることをしたいと、言ってくれたんだ」
「まさか……」
「今は納得ができなくても、いずれわかることだ!とにかく、城まで急ぐぞ!」
ボクがそれ以上何も言えなかったのは、有無を言わさない彼女の態度のせいなどではなかった。
ニンゲンのことを話す彼女の瞳が、あまりにも優しかったからだった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時