第110話 溝 ページ29
トリエルside
「ねえ、ゴアちゃん」
「ん、何だいトリィ?」
「私たち、いつも夢のような日々を過ごしているって思うの。何故だと思う?」
「ええ〜?何でだろうねぇ…」
「ふふ……何故なら私たちは‟ドリーマー”だから!」
あの人と出会い、結婚して、本当に毎日が幸せだった。少し気弱だけど、とても優しい心を持つあの人との間に、可愛い子供たちを迎えられたことも、それからの慌ただしい日々も、全てがかけがえのない思い出になった。
それなのに、あの人は。
「どうしてなの……!?あの二人との約束を……二人の気持ちを、無下にするって言うの!?」
「トリィ……私はもう、心を決めたんだ。私たちから全てを奪ったニンゲンを、許すことなんてできない……!わかってくれるだろう?」
「――ッ、わからないわよ……!!」
かつて温かみに溢れていた瞳は、こんなにも復讐の心に歪められてしまった。変わってしまった彼の姿に、私はもう、あの日には二度と戻れないのだと悟った。これ以上彼の傍にいれば、きっと私は苦しみに耐えられない。
だから私は、彼に別れを告げた。
.
久しぶりに再会したと思えば、ベッドの上で硬く目を閉ざしている彼の姿に、私は呆れ、怒りが湧いてくるのを感じた。
「…ああ、もう!何やってるのよ、あの人は……!」
『トリエルさん……』
「ええ、大丈夫よA。心配しないで、私に任せてちょうだい」
揺れる瞳で私を見上げる彼女に微笑みかけてから、彼の元へ急いだ。二人が見守る中、両手から発現した回復魔法の光が辺りを照らした時、一瞬、彼の目元が光ったように見えた。
「……本当にバカね、この人は…。こんなことになって、みっともなく泣くぐらいなら、最初から復讐なんて考えなければ良かったのよ…」
『……トリエルさん、私…』
遠慮がちな声に振り返ると、サンズの隣でAが拳を震わせていた。
『こんなこと、私が言える立場じゃないかもしれません。でも……私は、王様もきっと苦しかったんだと思います』
「A……」
『前に、私がアンダインと和解した時、彼女は言ってました。恨みや憎しみは、とても根深いものなのだと……だから、私の話を聞かずに襲ってしまったんだと……。だって、大切な人を失ってしまったら、私だったらきっと……』
「……」
大粒の涙を零し、震える声でごめんなさいと繰り返す彼女の声を、私はただ俯いて聞いていることしかできなかった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時