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貴方.
大「……正門のことかあ、やっぱり」
ふう、と心なしか苦しそうに息を吐いた大ちゃん。……当たり前だ。ずっと同期として切磋琢磨してきたのは、大ちゃんだって同じなんだから。裏切りじゃないけれど、多少なりとも申し訳ないと思ってしまう。もっとも、正門くん本人はそんなこと考えてもないのだろうけれど。
自分の考えを伝えようとすればするほど、喉の奥から込み上げてくるものがある。目頭が熱くなって、上手く話せなくなって……情けないけれど、あと一押しで泣いてしまう気がした。
『ずっと一緒におりたいって、ずっと同じことしてたいって、……やっぱり甘いんかな、私』
大「……そんなことない。大丈夫、大丈夫やから」
『大ちゃん、……正門くんは、私なんかおらんでも大丈夫やねん。絶対、……でも』
どんなに朝早くても、どんなに心が折れそうでも、どんなに孤独でも……私が耐えられたのは、正門くんがいたからで。正門くんがいたから、小島や佐野くんとも仲良くなれた。一つ、また一つと確実に武器を増やしていけた。
今の私がいるのは、間違いなく正門くんのおかげなのに。
『正門くんがおらな無理やったんや、私……』
大「A、」
『どうしよぉ、だいちゃん……怖い、……怖いんや、わたし、』
堰が切れたように溢れ出す涙は、頬を滑り落ちて、アスファルトに染み込んでいく。視界が歪んで、大ちゃんの顔もよく見えなかった。ここまでは我慢したけれど、もう限界だったと思う。全てをさらけ出せる大ちゃんと二人きりだから、泣かずに我慢する理由がもうどこにも見当たらなくて。
情けなく漏れ出る嗚咽も、きっとぐしゃぐしゃになっているであろう酷い顔も、全部気にならなかった。ただ私を抱き寄せてくれた大ちゃんに申し訳なくて、早く泣き止みたかったけれど、
大「……A、これからは俺が一番そばにおるからな。大丈夫やで、一人にはしやんから。な、……大丈夫やから」
大ちゃんだって不安でたまらなかったはずなのに、ただ私を守ろうとしてくれた。いつも矢面に立って、全ての批判を一人で耐えて……きっとこれからも、私たちを守ろうと頑張ってくれるんだろう。だとしたら、同じように頑張らなきゃいけないのは、もう一人のセンターの私なのに。
それでも止まらない涙のせいで、大ちゃんにしがみついたまま、立ち直ることができなかった。
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